年末に某金融機関系の証券会社の副社長KD氏と、教育に関して意見交換する機会があった。銀行が人員削減するとかで、就職戦線に異状がある。大手金融機関に就職できたところで、寄らば大樹の陰とはいかない時代になった。実は1990年代からそうなのだが。
大学でゼミを持っていた頃、京都大学の法学部や経済学部の学生に人気のある就職先は依然として金融機関だった。「そんなとこに就職してどうするんや」というのが正直な感想だったが、学生から、「ではどこがお勧めなんですか」と問われると、満点の答えが見つからなかった。
当時は証券投資関係のゼミだったこともあり、「証券関係の仕事をやりたいのなら、アセットマネジメント会社か、証券会社でアナリストの仕事を見つけるか、そのようなものか」と返答していた。ただし、「アセットマネジメント会社は少人数しか採用しないので、何社も回る必要がある」、「定年まで勤めるつもりではなく、キャリアを積んだら他の会社に転職するつもりで」と付け足した。
僕らの頃は、就職してその会社の慣習(つまり社風)にすっかり慣れれば、ある程度まで地位が上がり、それなりの給与が期待できる時代だった。今はそうではない。ましてや、詰め込んだ知識だけを振り回せば何とかなる時代が終わろうとしている。知識を組み合わせ、プラスアルファをし、付加価値を生み出さないといけない時代になっている。そのプラスアルファのために何をするのかが分岐点となる。
KD氏は、リカレント教育が求められているとの説だった。多分そうだろうし、今後はそういう大学教育が増える。京都大学経営管理大学院も、その方向にある。ただし、それがお仕着せであってはいけないと思う。
自らが仕事をしながら、そこで得た知識や経験を活かす努力をしなければ意味がない。もう少し言えば、お仕着せのリカレント教育なら、小学生、中学生と何も変わらない。20歳、30歳の大人にもなれば、自己評価する能力と、積極的な意思を持ち、何が自分自身に足りないのかをしっかり描けないといけない。
付け足せば、大人として論理的な展開力が求められる。世の中、正解のある問題はないに等しい。自分自身で問題を抽出し、80点程度の解を得るのが現実的かつ望ましい姿だろう。そして、まずは問題を抽出することが最重要になる。
ゼミ生から、「何を研究すればいいんですか」と質問される度に、「それを見つけられれば研究テーマの半分は終わっている」と答えていた。そういう僕自身、この事実を明確に悟るのにどれほどの年月を費やしたことか。
もちろん、そこまで明確に悟る必要もない。実は、誰しもが日々、問い、それに答える作業を繰り返しているはずだと思っている。その実際を少ししか認識していないだけである。意識的に問うことをやれば、つまり問題を明確にしようと少しでも心がければ、進歩が得られる。
少なくとも、就職に際して、何故この業種なのか、この仕事なのか、選んだ仕事をやり遂げるには何が必要なのか。とりあえずはこの程度の問が必要だろう。
2018/01/05