川北英隆のブログ

株価の下落もまた楽し

日米の株価が大幅に下落した。短期の買いポジションを取っているわけでなければ、下落はこれと思う企業を買う絶好のチャンスである。そういう視点でここ数日の新聞の見出しを眺めると、日本の記者というか新聞社の常識不足が目立つ。
たとえば昨日の(日本時間で今日未明の)ニューヨークダウの下げについて、「史上最大の下げ」とか「過去最大の下げ」とかの見出しが躍った。確かに、昨日の下げ幅1175ドルは、2008年のリーマンショック時で最大だった9月29日の下げ幅777ドルを大幅に上回っている。
では、これで「すわ、大変や」ということなのか。多くの記者のために丁寧に書いておきたい。
1万ドル投資して、1175ドル損するのと777ドル損するのとを比較すれば、それは1175ドルの損が大変である。しかし、元の投資金額が異なる。2008年9月29日の前営業日のニューヨークダウは11143ドル、今回の前営業日は25520ドルである。今回の投資金額は、リーマンショック時の2倍以上だと考えるのが妥当である。
つまり、損した率で株価変動を表現するのが正しいし、客観的で正しい記事を書くのなら、率を優先すべきである。そうすると、今回は1日で4.60%の下落、2008年9月29日は6.98%の下落である。
1175ドルの下落といっても、そんなに凄くはなく、1985年以降のデータだけでみても、上位20位にも入らない。それ以前にも、4.60%以上の下落はたくさんあるだろうから(データを紙ベースで持っているため、すぐには示せない)、昨日1日だけで騒ぐに値しない。
ちなみに、ニューヨークダウの1日での史上最大下落率は22.61%である。1987年10月19日のブラックマンデーに記録した。
その日は忘れもしない。すでに書いたかもしれないが、出勤前、テレビをつけると、「508ドルの暴落」とか某国営放送のアナウンサーが叫んでいいた。「ありえへん数字や」、「下落幅を間違えているのではないか」と思った程である。ブラックマンデーの前営業日の株価は2247ドルだったから、いくら常識を持ち合わせていなくても、508ドル下落のマグニチュードが理解できよう。
今日、日経平均は1071円下落した。(多分)過去17位の下落幅である。下落率は4.73%、1985年以降で46位である。1日のダメージとしては知れている。ジャブが顔面にヒットした程度か。もっとも、直近の高値から10パーセント以上下落したことになるから、少し足がぐらついたか。
株価は一本調子で上がらない。この程度の下落は当然想定しておかないといけない。そういう教訓である。

2018/02/06


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