昨日、有識者と夕食を食いながら雑談していると、話題が仮想通貨に及んだ。結論から述べると、行政に詳しい者、IT技術に詳しい者とにも、仮想通貨に否定的だった。
仮想通貨の英語表記は、これまでcrypto currenciesだった(1/26)。そこが、先日開催されたG20ではcrypto assetになったらしい。currencyと呼びたくないというのが、各国蔵相、中央銀行総裁の共通認識になったと考えていい。
日本語も仮想通貨を仮想取引物に変えることが望ましい。というのも、現在の仮想通貨=仮想取引物なるものの需要は、投機か闇取引だからである。
不安定な国、ベネズエラがペトロという仮想取引物(原油と交換できるというから、まさに物)を発行したのも、ドルを使わない(不足していて使えない)ためであり、闇取引に近似している。ロシア、イラン、トルコといった憎まれっ子も仮想取引物の発行を検討しているとか。
中国が仮想取引物の取引を禁止したのは、仮想取引物を仲介にして大量の資金が海外流出していたためである。
中国人は自国の中央政府を信じていない。そのアンシンジラブル文化の背景にあるのが、中国の歴史である。だから金が大好きであるし、子供が複数いたら海外各地に留学させる。当然、海外に資産を持ちたいと思っている。でも、そんなことを野放図に許したら中国という国が崩壊してしまう。そこで政府は海外との資金取引を厳しく監視しているのだが、その監視網を破る手段として仮想取引物が出現した。
金を大量に持ち出すのは大変である。麻薬なら簡単かもしれないが、見つかると中国では死刑である。その点、仮想取引物は極めて重宝だし、当初は合法だった(というか規制がなかった)から、中国で大流行した。だから、慌てて中国政府が禁止したのである。
日本が仮想取引物の取引に対して法律を整備したのは、そもそもはマネーロンダリング対策である。改正資金決済法によって法規制を整備したのがその証拠である。
地理的に中国が近いこともあり、仮想取引物の取引が比較的活発だったことから、この法整備によって日本が一気に「先進国」になってしまった。それが勇み足気味だったことは先に指摘したとおりである(1/26)。たとえれば、麻薬の合法的な取引を認めたようなものか。
現在、中国からだろうか、仮想取引物の取引をどうすればできるのか、問い合わせがたくさんあるとの発言もあった。日本の規制が寛容だからだろう。
関係業者の対応において、日米の差が大きい。FacebookやGoogleは仮想取引物を用いた資金調達(ICO、Initial Coin Offering)の広告を排除する措置をとっている。これに対して日本の業者は節操がない。仮想取引物の交換業者として大儲けしたいようで、あのヤフーが登録業者に出資するらしい。FX業者からの参入も相次いでいる。コインチェックが460億円だったかを返金できたことからすれば、一番儲かるのが仮想取引物の交換業者だからである。日本のマスコミも、重要な広告主にのし上がってきたからか、実態を知らないからか、比較的寛容である。
仮想取引物の背後にあるブロックチェーン技術は通貨に向かない、向くのは文書や契約だとの意見で一致した。ブロックチェーン技術の最大の利点は、「書き換えられない」ことにある。とすれば、公文書の改ざんを防止するため、罰ではないが、政府こそブロックチェーン技術を積極活用して文書保管すべきだと思えてしまう。
2018/03/24