川北英隆のブログ

ガバナンスコードの改定に思う

長ったらしい名前の会議、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の17年度セッションが終わり、「コーポレートガバナンス・コード改定案」、「投資家と企業の対話ガイドライン案」が公表された。どこがポイントか。
今回のセッションは昨年10月18日から始まり、3月13日までの5回の会合で構成された。すんなりと最終案に到達したと思っていい。
事務局(金融庁と東証)の問題意識は、企業と市場関係者の意識の低さ、行動力のなさにあったのではないだろうか。新聞には「良くなった」「世界と対等になった」と書かれることの多い日本企業だが、それは特定の企業に限定されている。しかも、その特定の企業が、世界基準から見れば小粒である。
「日本企業は素晴らしい」「今更何が必要なのか」と反論するのなら、10月18日の事務局説明資料を見るのがいい。アメリカとの比較で「まだまだや」とわかる。当日の会議の少し前、某日経新聞に「利益率で日本企業がアメリカ超え」という主旨の記事が掲載されていた。事務局は「嘘やろ」というのでこの資料を作ったと考えていい。
しかも、日本の大企業のガバナンスが変である。東芝はもちろん、自動車各社、神戸製鋼、富士フィルム、積水ハウスなど、有名どころで様々な事件が生じている。
グローバルに活躍している某著名企業に言わせると、「日本企業の意思決定は、オーナー系の多い京都企業でさえ遅すぎる」らしい。この感想とガバナンス問題と併せて考えると、企業組織が事業会社としての体をなしていない、もしくは欠陥だらけなのではと疑われても仕方ない。
会議では経営の根幹をなす取締役会に関して、数(形式)より質との議論が大勢を占めた。東芝問題が大きく影響していたと思う。さらに社長(CEO)をいい加減に選ぶな(選任、解任を誰かの趣味ではなく、客観的に行え)との議論が出された。質の問題でいえば、資本コストって何なのか知らないのではないか、取締役には全員(だったと思う)テストをすべきだとの、本気がどうかはともかく、そんな極論も出された。
市場関係者、とくに投資家に対する不満も事務局にあった。とくに企業年金が酷いとの意識である。従業員の年金原資を運用するのだから、「しっかりしてくれ」となる。
「企業が資金を拠出しているのだから、企業が勝手にやっていい」となるかもしれないが、運用がいい加減なら、そのツケは企業業績の悪化として跳ね返る。年金原資の積み立て不足である。そして、企業業績の悪化が続けば、企業は年金の減額を検討するだろう。残業問題と同様、従業員に対して、企業としての責任感のなさが露呈してしまう。結局は経営者の能力不足につながる問題である。
株式持ち合いなどの政策保有も議論の対象となった。株式持ち合いを解消しようにも、(端的に言うと)相手企業が嫌がらせをするとの意見もあった。さらに、持ち合い解消をしたように見せるため、自社の企業年金に持たせる(会計的には、みなし保有にする)ことも問題視された。
このように書いてくると、日本企業って「無茶苦茶でごじゃりまする」(古いか)ってとこだが、これが平均的企業の真の姿のようにも思える。
企業年金とともに、プロの投資家がちゃんとした調査をしていないのではないか、企業を訪問して通り一遍の質問しかしていないのではないかとの問題意識も事務局にあった。このため、「投資家と企業の対話ガイドライン案」が新たに作られたと思う。プロの投資家からすると、対話ガイドラインなんて初歩のハウツーものを突きつけられ、これを読めと言われた、バカにされたに等しい。
このガイドラインを含め、続きは次回に。

2018/03/30


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