さるところの議論で、日本郵政グループの経営が話題にのぼった。日本郵政、関心がないので見ていなかったが、業績が優れず、自己資本利益率(ROE)が低迷しているらしい。確認すると、確かにそうである。
この低迷の理由はいろいろあるのだろうが、最近の新聞にもあったように、郵政事業がユニバーサルサービスを提供している(過疎の村にも郵便局を置き、郵便を配達し、預金などを取り扱っている)ことに原因を求める意見が強まっているそうだ。このコスト負担は、総務省が2013年度について試算したところ、2500億円を超えているらしい。資料を確認すると、郵便1873億円、銀行575億円、保険183億円とある。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000358378.pdf
では、日本郵政グループ自身として、ユニバーサルサービスのコストをどの程度だと計算しているのだろうか。議論の場でこの質問をしたところ、試算はないらしい。あるのは先に示した少し古い総務省のものだけとのこと。しかも、上記の資料を見ればすぐにわかるように、この総務省の試算はきわめて簡便的である。
ユニバーサルサービスの提供を義務づけられている日本郵政グループとしては、内部の資料を駆使し、負担を強いられているコストをちゃんと試算し、政府と交渉するのが本来の姿ではないのか。
かつてのように政府組織の一部であれば多少の理解もできようが(それでも政府の義務として試算すべきであるが)、現在の日本郵政グループは上場会社であり、広く投資家を募っている。投資家がどれだけユニバーサルサービスのコストを(間接的ではあるが)負担しているのか、その結果、配当や値上がり益の犠牲を強いられているのか、それを明らかにすることが上場会社としての、その経営者としての最低限の責任である。
ユニバーサルサービスのコストが判明すれば、次に考えるべきなのは、サービスを続けながらもコストの圧縮を図る方法である。コスト削減を図ると同時に、政府に対して、「ユニバーサルサービスの提供は本来的に政府が行うべき役割であり、日本郵政グループはその役割を受託しているに過ぎない」と主張し、受託に対するフィーを請求することである。
上場企業が政府の仕事を無償で行うことが正しいのか。正しくないに決まっている。この議論を突き詰めると、日本郵政グループは上場すべきではなかったとの結論になってしまう。今さら、そこまで極端なことを言うつもりはない。
今の日本郵政グループとしてやるべきことは、本来の上場企業としての経営である。それができていないし、それをやろうとの意識も今のところないようだ。とすれば、このままの日本郵政グループは投資に値しないとの結論になってしまう。
2018/06/01