先日、京都大学においてキッコーマンの茂木名誉会長に講義を担当してもらった。あまり知られていないが、キッコーマンの海外売上高比率は6割、海外利益の比率はさらに高い。
要は醤油という日本の食品を事業としているものの、中身は国際的な企業である。この国際化において、若き頃の茂木名誉会長の役割が大きい。キッコーマンが最初に進出した海外とはアメリカだった。昭和30年代のことであり、きわめて早い。
その茂木名誉会長の講義の内容はキッコーマンの国際化の歩みに関してであり、そこから演繹できる国際化のポイントだった。
この国際化のポイントには(メモを取っていないので、確か)次の4つが重要だったと茂木名誉会長は振り返っていた。需要の創出、技術的な優位性、現地化、現地でのコンプライアンスの遵守である。
需要の創出に関しては、現地(アメリカ)の料理に合った醤油の使い方を作り出し、それをレシピにした。技術力に関しては、当然だが、醤油という発酵技術で優位にあった。現地化については、アメリカでの工場建設において、現地と溶け込んだので成功した。以上のことを語ってられた。
質疑の時間になり、僕自身の疑問を問うてみた。日本に多くの醤油屋があったのに、何故キッコーマンだけが海外で成功したのかと。4つのポイント以外に何かあったのかという質問である。
これに対する答えが明確だった。キッコーマンは野田地域の8つの醤油屋が合併してできた会社である。これにより日本最大という規模が確立できた。おかげで、海外進出のための力が得られたとのことである。いくら先進的な発想があったとしても、規模が伴わなければ(醤油のような装置産業においては)、その発想が生きないとのことだろう。資金はもちろん、人材も規模がなければ揃わない。
講義の後、軽い昼食をご一緒した。海外での事業として、ヨーロッパとオーストラリアが伸びているとのこと。中東向けには、発酵過程で必然的に生じるアルコールを抜く製造工程を加えているとのことだった(これは講義の際に学生からの質問に対する回答だった)。
アフリカが未開拓とのことだった。そこで、アフリカの料理は材料や味がシンプルだから、醤油が合うのではとの感想を述べておいた。旅行したとき、各地に醤油があると重宝かなとも思っている。
分かりやすい企業ではあるが、そんな日本企業が海外で活躍している。それも先駆的である。発想が豊かで行動力が備わった企業があったものだと感心する一方で、他の多くの日本企業は何をしていたのかとも思った。
2018/06/03