日本の株価形成への評価は芳しくない。上場企業は誰一人としてこの事実を語らない。中堅企業にとっては関係ないに等しいとは思うが、では日本を代表する企業にとってはどうか。とやかく文句を言う経団連がこの件に一言もないのは、利害が一致しているからなのか。
どの投資家が日本の株式を買っているのか。2018年3月末までの1年間について、取引所が6月に発表した株式分布状況調査で見てみよう。
それによると、株式を買った最大の投資家は投資信託である。時価総額に対する保有比率が前年度末の6.3%から7.2%に大幅に増えている。かつて保有比率4%程度で推移していた投資信託に何が生じているのか。
投資信託の真の保有者が誰なのかは、この調査だけではわからない。とはいえ、その相当部分は、日銀が金融政策の一環としてETF(上場投資信託)を買ったことによると考えていい(日銀自身が開示している株式保有金額で検証できる)。この結果、政策的に日本の株価が相当程度、上げ底化されていると思えてくる。
上げ底化の1つの証拠に、他の投資家は誰も積極的に日本の株式を買っていないようだ。海外投資家が、市場時価総額に対する保有比率を30.1から30.2%へと、わずかに上げた程度か。
以上をとりあえずまとめると、もしも日銀が買っていなければ、今の株価で積極的に日本株を買った投資家がいたのかと思える。たとえば、投資余力のある海外投資家が、現実において積極的に買わなかったのは何故か。日銀などの介入があった結果として、現実の株価が高いと判断したからだろう。
もう1つの証拠は小型株効果だろう。2016年の夏頃から、つまり日銀がETF購入額を増額し、しかも小型株が多く含まれる東証株価指数(TOPIX)の変化に連動するETFの購入に軸足を移した頃から、小型株の異常な価格上昇が生じてきた。
小型株の株価は通常の投資では買えない水準にまで上昇し、投機の対象となってしまった。これでは、まともな投資家が株式を買おうという気になれない。この小型株効果には、小型株における浮動株(売買対象となる株数)の少なさが影響していると考えられる。
小型株が高値にあるのなら、大型株はどうなのか。少し分析したところ、残念ながら投資する魅力に乏しい。実際にも買われていない。とくに、日本の代表的大企業がそうである。成熟企業が多すぎる。この点、アメリカ市場とは大きな差がある。
ターゲットの大きさを引き下げ、中堅企業はと言うと、魅力的な企業も混じっている。とはいえ、株式市場全体を動かすには力不足である。
大企業の集団である経団連は、小型株の株価水準を異常に持ち上げる日銀の金融政策に対して何の反論もしていない(反論した事実を知らない)。勘ぐるに、日銀のETF購入によって、株価形成の面で自分達も、ある程度の恩恵を得たと思っているからだろう。
とはいえ、現在の大企業の株価は自分達の経営の成果によるものではない。経営の力で株価を上げることが、真の企業の姿なのだが、日本の大企業はその段階に到達していない。
まとめておく、本当の株式投資家であれば、長期的な株価形成の目線に基づいて、今後の投資対象が日本株か海外株かを見分ける必要がある。その上で、それぞれの市場に上場している企業の魅力度を評価することになる。
サラリーマンが株式投資で成功する秘訣とは、株式専門誌の読破でもチャート分析でもない。冷静かつセオリーに基づいて、企業の業績を把握することである。そのついでに、市場のセンチメント(楽観過ぎるとか、悲観過ぎるとか)を感じることである。
2018/07/02