川北英隆のブログ

投資できる株価指数がほしい

新しい株価指数を作ることで東京証券取引所と京都大学(川北)が合意した。17日、東京証券取引所と京都大学がプレス発表し、その抜粋が18日の日経新聞、株式面に掲載された。
プレス発表の内容は次のサイトにある。
https://www.jpx.co.jp/news/1044/20180718-01.html
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/events_news/department/ba/news/2018/180701_1.html
新しい株価指数を共同開発する趣旨は、「投資するに値する株価指数がほしい」ことに尽きる。プレス発表では僕のコメントとして、「共同研究を通じて、日本株を長期的に運用する投資家にとって有用な新たなベンチマークの開発を目指します」とある。同じ意味である。
日本の株価指数として代表的なものは、東証株価指数(TOPIX)、日経平均株価、JPX日経インデックス400(JPX400)の3つだろうか(これら以外を信奉していたらご免なさいだが)。
このうち、最も古いのが日経平均株価である。戦後(京都でいう応仁の乱ではなく、第二次世界大戦の後)、1949年に株式取引が再開した日から計算が始まっている。昭和30年代後半、株式投資ブームが起きたとき、日経平均株価が連日のように最高値を更新したので、個人投資家が証券会社の店頭に来て、「日経平均を買いたいなあ」と言ったとか。今では現物も先物も買えるのだが、当時は買えなかった。だから、ブームの中で生じた笑い話として伝えられている。
TOPIXの計算が始まったのは1969年である。やはりTOPIXを買いたいと思っても買えない時代である。
では、どういう理由で日経平均株価やTOPIXが計算されたのか。株式市場全体の値動き、つまり全体としてどの程度上がったのか下がったのかを知るためである。投資するためではない。後付けで投資対象になったものだから、どうかと思う点がいろいろある。
投資に向いていない点を説明すればきりがないものの、簡単に書いておく。
TOPIXは東証第一部に上場されている全企業(6月末現在2096社)が指数計算の対象となる。この上場企業の質はピンキリである。普通の投資家としては、できれば生きのいい企業を買いたいと思うだろう。TOPIXでは、この普通の投資家の思いをかなえるのが難しい。
日経平均株価は、日経新聞社が選んだ225社の株価について、その単純平均を基準として計算される。単純平均だから、イメージすればすぐに理解できるように、値段の高い企業の株価変動の影響が大きい。具体的にはユニクロ(ファーストリテイリング)やファナックなどの影響が大きいことになる。日経平均株価に投資をすることは、実は特定の企業に投資をしたことに近いのである。そんな投資でいいのかと、普通の投資家なら思うだろう。逆にユニクロややファナックなどに投資したいのなら、ずばりその株を買えばいい。
普通の投資家が、たとえばサラリーマンや年金などが株式投資をし、毎日の相場に一喜一憂することなく、忘れた頃に株価欄を見たら、「あっ、上がっているやん、良かった」というような株価指数を作りたいと思った。この思いを東証にぶつけたところ、今回の共同開発になった次第である。もちろん、知り合いの投資家にも構想の相談している。
今年度末に向け、200企業程度で構成される株価指数の具体案をまとめ、その後に本格開発したいと考えている。
僕が動いて、その結果が新聞記事になったのは今回で2回目である。最初は前の会社の取締役を勝手に辞任して大学教員になった時である。それから15年が経った。今回の動きが本当に実現するのかどうか、しばらく努力してみたい。

2018/07/20


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