川北英隆のブログ

精霊の家の現実

今回の旅行の最後になるのだが、現存するという精霊の家(ハウスタンバラン)を3箇所、訪れた。同行者の2人が楽しみにしていた場所でもある。パプアニューギニア文化の象徴との評判だったから。
2泊したヤウンバクもそうだったし、セピック川上流部の入口、イガイ(Yigai)という村でもそうだったのだが、ハウスタンバランは維持されていなかった。男達が集会する場所はあるのだが、その場所に精霊が降りることがないのか、忘れさられようとしているか。
今回の旅行では中流域の中心部、パリンべ(Palambei)とカンガナム(Kanganaman)を訪れた。本当はもう1箇所、イェンチェン(Yentchan)を訪れる(手配旅行会社の)計画だったが、時間の関係で訪問できなかった。
この中流域の村にはハウスタンバランが残っていた。とはいえ、どこまで本来の目的で使われているのかは不明に近いというのが正直な感想である。
パリンべ村には大小2つのハウスタンバランがある。
大きい方は第二次世界大戦の空爆(日本軍とも米軍とも言われている)でほとんど破壊されたらしい。精霊の椅子などの重要なものだけが空爆の直前に運び出され、再建されたハウスタンバランの2階に置かれていた。その2階部分だが、面や彫刻などが大小様々並べられている。これらはすべて売り物である。つまり土産物コーナーである。「これがハウスタンバランか」と思ってしまった。
小さい方は、まだ儀式に使われているそうだ。当日、男性の成人の儀式(ワニの入れ墨を胸や背中に施すイニシエーション)の後、ハウスタンバランを練り歩く見世物(だと思う)があった。三角形に組まれた木々の葉をかぶり、ウォ、ウォと声を響かせながら2つのハウスタンバランの間を歩くのである。
イニシエーションは今でも行われているし、その跡を何回も見せてもらったので、それを疑ったわけでない。疑ったのは、「そんなに都合よくイニシエーションなんてないやろ」という点だ。見世物だと感じながら見ていると、日本のゆるキャラ風でもある。残念ながら撮影禁止だった。
ウエワクに戻る時、他の村のハウスタンバランで同じような「本物の見世物」を撮ったので、後日にアップしたい。
カンガナム村でも大小2つのハウスタンバランがあった。大きい方は昔の姿を残しているので有名である。確かに、パリンべ村のハウスタンバランとは異なり、多くの柱に立派な彫刻が施されている。とはいえ、やはり建物は面や彫刻などの売り場になっている。
写真はカンガナムのハウスタンバランである。正面の柱の3層目(斜めの添え木のある部分)には女性像が彫られていて、豊穣の象徴となっている(意味がわかるかな)。柱の先端部には鳥の像が施されていて、天空を象徴している。
20180815カンガナムのハウスタンバラン.JPG

2018/08/15


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