昨年の正月にコンゴ川を下った。その1年半後、今回のセピック川の旅である。コンゴ川は流水量世界第2位である(第1位はアマゾン川)。大きさには差があるものの、2つの川は高度差がほとんどない地帯を流れ、付近に多くの住民が住むことでは大差ない。
だから、最初は「コンゴと一緒かな」と思ってしまった。しかし、4泊して強く思ったのは、コンゴとは全く違うということである。住民が擦れていない。もちろん観光客が多い地域では多少擦れているのだが、世知辛くない。端的に言うと「金、金、金」がコンゴだとすれば、セピックは金に関してえらく緩い。
例えば、川を舟で移動していて、コンゴ川ではすぐに舟で近寄ってくる物売りが、セピック川では皆無だった。おかげで、セピック川では現地の美味い食材を食べることができなかった。反対に、その食材の代金を請求されることもなかった。
コンゴ川でうるさいほど経験したような、子供が「金、金、金」と連呼することもなかった。村に上陸すると、コンゴ川ではすぐに「入村料」やその地域に駐在する役人への賄賂の交渉が始まり、そのために何時間も浪費したが(我々は訳も分からず待たされるだけだったが)、セピック川では(多分契約した料金を払っていると思うのだが)、何事もないようだった。
これは川での出来事ではないが、同行者が現地通貨を入れた封筒を車に落としたままだった時(我々も気づかなかった)、現地の同行者(荷物の運搬係)が、「封筒が落ちてる」と知らせてくれた。
この両国の差がどこにあるのか。豊かさと国家統治の差であるとしか思えない。コンゴ川とセピック川で豊かさの差があるのか。経済環境(作物や魚などの自然資源)は大差ないようなのに。
思うに、子供の数はセピック川のほうが少ない。それと、駐在役人をセピック川では見かけなかった。このため、村人は上前をはねられないのだろう。
教育も、学校が近くにあることからすると、セピック川のほうが行き届いているようだった。今でも影響力を有するオーストラリアの力なのだろうか。この点は、昨年訪問したバヌアツでも感じたことである。今までの経験からすると、イギリスの植民地支配は(それなりにという表現を添えるが)良心的だったようだ。それ以外の国は感心しない(感心したことがない)。
結論として、コンゴ川を再度下ろうという気にはならない。特別招待でも受ければ別だが。これに対して、前回も書いたように、セピック川なら次回も行きたいと思う。言っておくが(上でも何となく書いたよう)、飯はコンゴ川のほうが上だった。それにもかかわらず、である。
写真はヤウンバクを離れるときの見送りである。子供だけでなく、大勢の大人も見送ってくれた。
2018/08/20