米中の対立が深まっている。トランプが仕掛け、中国政府が対抗している図式だが、そもそも中国政府も対立の下地を作ってきた。それはともかく、トランプの行動で思うのは、個人的、商売人的発想での行動だということ。経済全体を司る大統領の資質に欠けている。
端的には合成の誤謬というか、経済全体を俯瞰する能力がない。
商売であれば、取引先や競合先を叩きのめせば、それで決着がつく。長期的には「酷い奴」との悪評が生まれるかもしれないものの、当面は力が正義であり、勝てば官軍と割り切れる。トランプは同じ行動を政治に対しても踏襲している。
国と国の場合は、ましてや相手が大国の場合、事は商売ほど簡単でない。今回アメリカが中国に向けて発動した制裁関税は、新聞で報道されているように、アメリカIT産業が中国から輸入する半導体にも課せられる。ある意味、天に唾したのである。しかも、中国から他国に調達先を変更しようにも、不可能に近い。つまり、中国を叩いたつもりが、自国であるアメリカもついでに叩いている。
しかも中国からの攻撃(関税引き上げの報復)がある。アメリカの主な狙いである中国IT産業以外にも戦火が広がっている。このまま叩き合いが続けば、アメリカ経済に広くダメージが及ぶ。
トランプの真の狙いは何なのか。アメリカ経済が、世界経済チャンピオンとしての座をこれからも保てるようにとのことである。同時に、トランプ自身の名誉のためである。大統領に立候補したのも名誉のためだろうし、期せずして(いろいろと工作してかもしれないが)大統領になったからには、2期務めることが大統領としての一流の証となる。だから、人気取りのため、あの手この手を繰り出している。
トランプの過去の行動に関して疑惑が生じ、裁判になっている。その裁判の1つで、トランプの元顧問弁護士が「大統領選挙を有利に進めるため、トランプの元彼女に対して口止め料を払った」等、有罪を認めた事実に関連し、トランプは「自分が議会に弾劾されたのなら、株式市場は崩壊する」と語ったとか。
思うに、トランプの弾劾は一時的な「アメリカ政治の混乱」として、市場にはマイナス要因かもしれない。しかし、数ヶ月以上の時間から見れば、確実にプラスだろう。次の大統領がトランプのような名誉欲に固まった商売人でない可能性が高いからである。
もう1点、このまま次の大統領選挙を迎えたのなら、トランプからあることないこと口撃されるのを恐れ、まともな人間なら誰も立候補しないのではとの観測もある。そうなれば、さらに4年間、トランプが大統領を務める可能性が高くなる。
経済全体を見る資質に欠ける大統領がこれから6年間も言いたい放題、やりたい放題なら、アメリカ経済はもちろん、世界経済は大丈夫なのか。大いに心配である。
2018/08/25