川北英隆のブログ

変な食膳のマナー

日経新聞を読んでいると、お膳の上の味噌汁の位置に関して大阪が変だ(見出しでは東西で違う)との記事があった。気になったのは、位置の違いと同時に、「マナー」とは何かだった。
大阪での味噌汁は左上である。左手前にご飯があり、右手前に主菜がある。これが写真入りで示されていた。
では広東違う関東ではどうなのかを見ようとすると、その関東が「ない」。その代わりに「マナー」という文字があり、神奈川、東京、埼玉、群馬に「マナー」を守っている印(というか色)が付けられていた。この「礼儀正しい」地域では、味噌汁が右手前にあり、主菜が右奥にある。
関西人からすると、「マナー」に従うと食べにくい。「味噌汁を飲むとき、左手の動きに無駄が生じるやん」「主菜を食べるとき、右手の動きが大きくなるやん」「それに、右手を味噌汁の椀に引っ掛ける確率が高くなり、そうすると椀をひっくり返してほんまのマナー違反というか、粗相に発展するやん」と思う。新聞にも同じようなことが書いてある。
では、何故マナーなるものが関西の常識と違うのか。これも新聞に少し書いてあるが、左が上位で、右が下位だから、ご飯を上位の左に、味噌汁を下位の右に据えるのだとか。ネットで調べたところ、やはりこの左と右の上下関係説が書かれていた。何故、左が上位なのかは今一つ理解できないが(ちなみに、インドやアラブでは左手は不浄である)。
さらには、味噌汁が何故手前で、主菜が奥かはわからなかった。推測するに、貧しい時代、ご飯と味噌汁しか食べられなかったから、左と右の上下関係だけで、自然とご飯と汁物の位置が決まったのだろうか。今の主菜は新参ものだから、当然のごとく奥に置かれたのだろう。
もっと言えば、ご飯というか炭水化物の食べ物しかない時代があり、そこに副菜として汁物が加わったから、汁物が椀を持つ動作からすると劣位にある右手側に置かれたのかもしれない。その方が主要なエネルギー源だった炭水化物を食べやすいし、半分本気ながら、ぶっかけ飯(猫マンマ)にしても食べやすい。
「マナー」なるもの、神様に食事をお供えするときの礼儀が基礎なのだろう。当時の自分達のお膳を真似て神様に供え、それが儀礼化していったと思う。
とすれば、「神様は万能やし、箸を動かさずに食べられるやろが」と思う。こっちは神様ではない。食べやすいように置いてほしいものだ。
マナーとは(宗教もそうだが)、それが生まれた時代の合理性に基づいている。いまだに左と右の上下関係に基づいて味噌汁の位置を決めていたのでは、宗教的なタブーを笑えたものではない。主菜を当然のごとく食べるこの時代での合理性からすれば、関西流以外はありえない。
広東違う関東流をマナーだと固守しているから、もしかして、いまだにご飯と味噌汁しか食べられずに栄養不足だから、日本はネットの時代に遅れるのかな。少し大げさに考えてもみた。
「じゃあ、そういうアンタは何流なのか」と問われたら、「実は味噌汁をあまり好んで食べへんし、普段意識したことはあらへん」と答えておきたい。
追記:読者から「味噌汁、自分で作るときに、やはり右手手前に置いているが」とメールがあった。難しいものだ。

2018/09/07


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