音響機器で有名だったパイオニアが香港系ファンドの支援を受け、今月末の資金繰りの危機をしのいだ。いずれこのファンド向けに第三者割当増資を行い、再建を目指すとか。
昭和40年代から50年代にかけ、パイオニアは垂涎の優良株だった。投資したことがないというか、投資したくても高値の花だったので詳しくは覚えていないが、少し高級なオーディオ機器といえばパイオニアだったと思う。
そもそも、ステレオとかステレオプレーヤーとか、これらの名称はもはや化石に近いのだろうが。
「国産オーディオ御三家」で検索すると、山水電気、トリオ(ケンウッド)、パイオニアの名前が出てくる。このうち、ケンウッドは2008年にビクターと経営統合、11年に消滅した。山水は2014年に潰れた。パイオニアの音響(AV機器)部門は2015年にオンキョーに売却されている。そのオンキョーの業績も苦戦中である。
その他、思い出すと、赤井電機やナカミチがあった。この2社も事実上消滅している。
パイオニアが有名になったのは、セパレート型ステレオを世界で最初に発売したことによる。スピーカーを自由に置けるようにしたのである。部品の組み合わせ(テレビでよく言われる部品の摺り合わせ)技術で、日本製が世界のトップに立ったのだろう。昭和50年代はステレオ装置の輸出が大きく伸びた。
しかし、テレビと同様、ステレオがデジタル化した。レコード盤がCDにとって代わられた。僕の趣味の範囲外だが、オーディオ機器の世界もテレビと一緒で、アナログ部品の手作業的組み合わせを離れ、デジタル部品で簡単に組み立てられるようになったし、パソコン類との連携も容易になった。レコード盤がなくなり、磁気テープもなくなり、今やCDも時代遅れになった。
当然、オーディオ機器も様変わりである。このブログを書くついでに、(2000年頃に買ったと思う)僕のステレオ装置も買い替え時かなと思い、ネットで探すと、イメージしているような機器が見つからない。要するに、アンプ、CDプレーヤー、テープレコーダーなどをセットにした機器がない。真剣に探せばあるのだろうが、あったとしてもマニア向けなのかもしれない。
一般にはアンプ、スピーカーだけで十分なのだろう。しかもパソコン類からコードでつないだり、ブルートゥース対応のスピーカーを買ったりすれば、音質はともかく、アンプも必須ではなくなる。とすれば、オーディオ機器メーカーが衰退するはずだ。
パイオニアも手をこまねいていたわけでない。カーナビ分野に力を入れてきたが、この分野こそ最大の変化を遂げている。狙う分野が酷かった。
パイオニアはオーディオの延長のつもりで参入したのだろうが、それでは後手に回らざるをえない。スマホさえあれば位置情報は十二分に得られる。カーナビという専用機器に残された機能は、安全に車を運転しながら、どのように位置情報を得るかだけである。これさえも自動運転にとって代わられようとしている。
香港のファンドが何を考えているのか不明である。山水電気も複数の海外ファンドの支援を受けたものの、じり貧の道を免れられなかった。今後のパイオニアを暗示しているのかもしれない。そうならないようにと祈るばかりだが。
2018/09/14