川北英隆のブログ

東京都のセンスの悪いジョーク

先日、ニュースを見ていて「へへへ」と笑ってしまった。最近、その日のうちに新聞を読まない(読めない)ことが多いこともあり、いつのニュースか忘れたが、検索すると9/30の日経新聞だった。見出しには、東京「金融市長」に中曽氏とある。
東京をロンドンのような国際金融都市にする構想の一環として、東京都が中心となって「海外向けの呼び込み組織」を作り、その代表理事に前日銀副総裁の中曽さんを迎えようということらしい。中曽さんはある意味、客寄せパンダである。
予め断っておくと、中曽さんとは少しだけだが面識があり、話を聞いたこともあるが、悪い人物ではない。日銀副総裁を務めたわけだから、能力も高い。だから、中曽氏を笑ったわけではない。笑ったのは、東京都のセンスの悪さである。
どうセンスが悪いのか。債券市場をぶち壊し(国債流通市場を機能不全にし)、銀行経営にも手ひどい影響を与え(地銀の経営を七転八倒に等しくし)、株式市場にも悪い注射を打ち続けている(買った巨額の株式をどう処分するのか、はなはだ疑問な)日銀の、前参謀本部長を国際金融都市構想の顔にしようとしている。そのセンスである。
もう一度断っておくと、中曽さんとしても、好き好んで市場を壊そうとしたわけでないだろう。しかし結果として、そういう政策の旗を振ったのも確かである。
以上は、東京都として狙ったブラックジョークならまだしも、狙ったわけでもないだろうから、こちらとしては「へへへ」と笑わざるをえないのである。金融関係者からどう見えるのか。とくに、東京都が呼び寄せようとしている海外からの見え方が問題である。
そもそも、東京都の国際金融都市構想は「えらく緩い政策」であり、何をどうしようとしているのか理解できない。一度、その構想の中で喋らされたことがあった。その時、ついでに東京都の立ち回り方を見ていると、「組織としての体をなしていないのではないか」「海外の主要な金融都市の表面をなぞっているにすぎない」というものだった。
多分、金融市長という構想も同様に、表面的な思いつきだろう。ロンドンにある制度(金融メイヤー=金融市長)の真似である。どうなることやら、中曽さんにとって有難迷惑にならなければいいがと、かえって心配する。

2018/10/02


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