昨日(10/9)の日経新聞のコラム、「大機小機」(陰陽)では、「バフェット氏の示唆」と題して、日本でもインデックス型投資信託をもっと推奨すべきだとの主張していた。半分正しいものの、生半可すぎる。だから妄信と題しておいた。
日本の投資信託が、とくに従前、顧客のためというよりも証券会社のために多数設定されてきたのは事実だろう。流行りのテーマを追い、次々にキャッチーな名前を付け、個人に積極的に販売されてきた。
その投資信託、旬が過ぎれば忘れ去られ、まだ存命なのに(投資残高があるのに)墓標よろしく、日経新聞の相場欄に十把一絡げで並べられる。投資家からすれば、自分の投資信託がどこにあり、価格がいくらなのかは、手慣れていないとわからない。久しぶりに先祖の墓に参り、「ええっ、どこにあるんや」と迷うのに似ている。
投資信託を次々に作っては売りを繰り返すのは、作る側に自信がない証拠である。もしくは、数を打てば当たると思っているのかもしれない。このような投資信託の設定よりも、インデックス型を1本か2本売る方が洗練されている。表面的にはそう言える。投資家の立場にも配慮している。
とはいえ、以上のことを主張するのにバフェットを引き合いに出すのは大仰どころか、墓穴を掘ったに等しい。というのも、アメリカと日本のインデックスというか株式市場の構造には大きな差がある。
バフェットがアメリカの代表的な株価指数であるS&P500を推奨するのは、計算していないので憶測だが、最近のバフェット氏の投資パフォーマンスを上回っているからではないだろうか。バフェットはアマゾン、グーグルに投資せず、アップルにも最近まで投資してこなかった。アメリカの株式市場の活況と値上がりの相当部分を、これら企業が導いていたのにもかかわらず、である。
これらの企業はアメリカ株式市場の時価総額トップ集団でもある。S&P500にも採用されている。念のために書けば、S&P500の採用企業は上場企業の1割程度であり、石ではなく、玉もしくは玉の候補が入れられている。
これに対して日本の株価指数はどうなのか。一番よく使われている東証株価指数(TOPIX)は東証第1部の全企業によって計算される。このため、市場全体の値動きを示すには優れている。しかし、投資対象としては玉石混交と言わざるをえない。しかも、時価総額上位の企業の投資パフォーマンスが悪すぎる(後日、機会があれば紹介したい)。アメリカ市場とは大差である。
まとめれば、アメリカと日本の株価指数の差は、1つは、玉もしくはその候補を選りすぐっているのか、玉も石もごっちゃなのかにある。もう1つは、大企業が投資対象として魅力的なのか、魅力薄なのかにある。この差を無視し(知らずに)、株価指数もしくはインデックスと同じカテゴリーなので、同じように魅力的だと決めつけるのは、生半可というか、素人すぎるというか。
ついでに書いておくと、今の僕の研究は、日本市場における魅力的な(高い投資パフォーマンスをもたらす)株価指数の構築にある。東証の協力を得て、この研究を進めている。
2018/10/10