川北英隆のブログ

新規上場ソフトバンクに関して

昨日、ソフトバンググループが切り離した国内通信子会社、ソフトバンクが上場を果たした。これに関して、多くを語りはしないが、いくつか指摘しておきたい。
1つは親会社との関係である。新規上場を認めるかどうかの議論において、この点が1つの焦点となった。出来上がりは、親会社と相当程度の距離を保つガバナンス体制が作れたと思っている。新規上場に際するソフトバンク経営者の記者会見でも、このガバナンス体制の確立が強調されていたと思う。
とはいえ、いくら距離を設けたところで、現状、親会社が過半数を占める大株主であることに変わりはない。経営体制に対する最終的な決定権を把握している。この点、投資家として注意を払わなければならない。
たとえば、社長をはじめとする経営者の選任、解任権を実質的に掌握している。特別決議(過半数を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上による決議)も、個人株主が多いことからすれば、親会社の意向が通る状態にある。
2つに、このような状態での親子上場を認めていいのかどうかである。先日、有識者が嘆いていた。日本郵政とその子会社の新規上場が実現してしまい、企業統治(ガバナンス)上、問題の多い親子上場を解消したいという良識派の願いが完全に吹き飛んだと。
日本郵政、NTTを代表とするように、政府系が堂々と親子上場を果たした。というか、それを政府が認めさせた。同じ有識者は、金融庁が音頭をとって導入したコーポレートガバナンス・コードが虚しいとも主張していた。
3つに、ある意味でマイナーな問題点なのだが、配当性向を85%と非常に高くし、利回り株として投資家を募ったことである。5%の配当利回りが得られるという。
推測だが、この配当性向の高さは、ある意味で親会社の希望だろう。今までと同様、通信子会社からの利益をグループ全体の投資戦略に再投資したいと考えている。裏返せば、通信子会社はグループとしての成長戦略を担わないのだろう。通信事業自身の成長が今後は限定的だから、その利益のうちの僅かな部分を新規設備投資に回せば間に合うとの判断があるのだろうか。
では、5%の配当で投資家は満足するのか。立場上は投資できないし、そもそも投資する気がないものの、僕なら満足しない。株式投資へのリスクを考えれば、さらには親会社が存在することのリスクも加味するのなら、値上がり益への期待と配当利回りとを合わせ、少なくとも7%は欲しい。つまり、現状を前提とすれば、2%以上の利益成長がほしいところである。
また、規制によって大きな利益を享受してきた通信業界だが、その規制が今後どうなるのかが投資の是非に関する重要な分岐点となる。これに関してはコメントしない。投資したいと思うものが真剣に考えるべきことだと思っている。

2018/12/20


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