何日か前、ゼロ金利政策への疑問として、中央銀行の超緩和金融政策がダメ企業の延命を助けるため、製品やサービスの供給が絞られず、かえって物価の低迷をもたらすのではとの仮説が日経新聞で紹介されていた。中央銀行が目標とするインフレ政策と整合的でない。
この点で中央銀行を激しく責めることはできない。金融を緩和し、金利を引き下げることが経済活動を刺激し、物価の上昇をもたらすというのが従来の定説だった。また、超緩和金融政策が物価の低迷をもたらすということが完全に証明されたわけでもない。もっとも、デフレ的な低成長という新しい経済状態に従来の定説が通じるのかどうか、この点を中央銀行として疑うべきだったとは思うが。
それはともかく、政府の政策において、他の政策や経済社会の現状と明らかに不整合な例はいくつもある。思いつくままに指摘しておきたい。いくつかは、このブログで指摘したことだが。
1つに、日本政府として、企業をできるかぎり潰さない政策を好んできたことである。このため、多くのダメ企業が日本国内に残っている。これらの、いわゆるゾンビ企業のおかげで、国内市場は過当競争、価格の叩きあいの状態にある。前に書いたかもしれないが、日本の某著名企業でさえ、「国内市場では儲からない、だから海外に出るしかない」と語っている。デフレ脱却、できれば2%のインフレの達成という、日銀が打ち出し、政府も合意している政策目標と明らかに不整合である。
2つに、これと類似のことだが、東証が見直そうとしている上場制度に対し、反対論が政府に近い筋から聞こえてくることである。すなわち、東証1部の上場基準を時価総額500億円とか250億円とかで足切りしようとしていることに対し、「時価総額がそれ未満の企業の不利益になる、日本経済のために良くない」との反対論である。日本が世界で一番の社会主義国だと評されていることを思い出させる反対論でもある。思うに、企業を強くするためには、旅をさせないといけないし、千尋の谷に突き落とさないといけない。東証がすんなりと上場基準を見直し、実行に移せるかどうかは、政府に頭脳と良心があるのかどうかの試金石になるだろう。
3つに、業績の良くない地方銀行にイエローカードやレッドカードを出そうとの金融庁の方針である。理解できないわけではないが、日銀が超緩和金融政策を何年も続け、その傍らで老齢化と人口減少が進み、首都圏への一極集中が止まらない状況において、地方銀行の経営に今更何を求めるのだろうかとも思う。政府が老齢化や人口減少、首都圏への一極集中に対して有効な対策を打ち出せない中、たかが地方の銀行にどの程度のことができるのだろうか。僕が経営者なら、「ほな、おたくがやってんか」と言ってしまうかもしれない。
4つに、海外から観光客を引っ張ってくる政策である。その悪影響を十分に考えた上の政策なのかどうか。例としての京都の崩壊について何回も書いたので、これ以上は書かない。
5つに、親子上場問題を政府が取り上げている。これも何日か前に書いたように、そもそも政府系企業が堂々たる親子上場を果たしてきた。その事実を棚に上げようというのかと、不思議な議論である。
ここまで書いて疲れてしまった。本日はこれまでである。
2019/03/17