キャッシュレスを必死に推進しようとする政府と、それに踊らない庶民がある。何が溝になっているのか。政府に個人情報を知られたくないという心情だろう。
最近旅行した2つの国、インドとエジプトではキャッシュ(現金)が必需だった。
インドは強制的に紙幣を切り替えた(旧高額紙幣を廃止した)ことで知られる。汚職、脱税、テロ資金などの裏世界への対策だったとされる。一方、エジプトは政情がいつ再び不安定になるかわからない。
だから庶民、とくに少しお金を持っている者の心情として、価値が比較的安定しているドルやユーロの紙幣を欲しがる。そういえば、インド人や中国人が、またアラブ諸国の国民が金銀財宝を珍重するのは、それらの価値が、自国通貨との比較で安定していたという理由が大きいだろう。もちろん、大きな価値を簡単に持ち運べるという理由もあろうが。
インドとエジプトの旅行で現金を使ったのは、主にガイドや運転手用のチップだった。土産物屋でもドルやユーロでの支払いのほうが喜ばれる雰囲気だった(真面目に試さなかったが)。
インドではあまり感じなかったのだが、エジプトのガイドはチップをしっかりと要求することが多かった。日本の旅行会社は、手配した個人旅行の場合、ガイドや運転手に対するチップの目安を案内書に記載してくる。ヨーロッパからの旅行者がチップとして支払う金額に対して、日本の旅行会社の提示は高めのようだった。そのチップの総額、1週間程度の旅行だと、すぐに1万円程度に達する。
それはともかく、ガイドらはもらったチップをどうするのか。そのまま現金として手持ちするに違いない。必要に応じ、いつでも自国の通貨に交換できるはずだ。さらには、ドルやユーロがそのまま流通するのだろう。むしろ、大口の取引はドルやユーロだろうし、裏取引では必須だろう。
思い出したが、小額のドル紙幣よりも100ドル紙幣の交換レートの方が高い国はいくつもある。当然、裏取引に便利だからである。
日本での現金需要もほぼ同じだろう。異なるのは、ドルやユーロに対する需要が皆無に近く、もっぱら福沢さんを信仰することだが。現金で持っていれば、少し前まで心配していたような銀行の倒産とも無縁である。相続の時に税務署に補足される心配も少ない。取引の記録も残りにくい(個人相手であれば残らない)。今なら、その現金を銀行に預金したところで、得られる利息は現金を引き出す手間賃にもならない。心配は泥棒に入られることくらいか。
そもそもキャッシュレスにならない世界がある。宗教の世界である。お賽銭、お布施は現金である。小切手が可能かどうか、多分可能だろうが、クレジットカードで支払えないのは間違いない。そもそも宗教は税のない世界である。
その宗教の世界を真似たのか、前にも書いたように京都では「現金払いのみ」がまかり通っている。政府がキャッシュレスを声高に叫べば叫ぶほど、政府に反抗する京都は、「きっと裏がある」と思い、頑なにキャッシュの世界に閉じこもるように思う。個人経営に近い零細企業もそうだろう。
そんなこんなを思っていると、日本のキャッシュレスに関してニュースがあった。ソニー開発のFeliCa(フェリカ)を搭載した中小零細企業向け決済サービスを「スクエア」というアメリカ企業が提供し、それと三井住友カードが組むという(3/27日経)。
3/19のこのブログで書いたように、FeliCaは超の付くくらい便利であり、まだ発展の余地を残しているようだ。日本の技術に頑張ってほしいものだと、久しぶりに日本を応援したくなった。といっても、(変にアレンジしていない)日本食の大ファンを続けているのだが。
2019/04/02