川北英隆のブログ

資産の形成方法は単純-2

老後のために資産形成するには、その1で述べたように、ちゃんとした投資をし、リターンを得なければならない。海外株式、特定の日本企業の株式がお勧めである。これに加え、別の視点、リスクへの備えも求められる。日本人が見逃している最大のリスクは地震である。
長生きのリスクに備えるために資産を形成しようとしている。病気のリスクには健康保険があり、個人で掛ける医療保険がある。火災保険に加入することも多い(僕は加入していないが)。
このようにリスクを意識し、それに備えるのなら、最大のリスクの1つ、南海や首都圏で発生しうる大地震に備えなくてどうするのか。それとも、地震によって日本全体が大損害を被るから、個々人の相対的な豊かさに大きな影響がないと、無意識のうちに判断しているのか。
少しイメージを膨らませればいい。明治維新時に外人がやって来て二束三文で売られた浮世絵をはじめとする美術品を買い漁った。それと同様、被災から復興し始めた日本に中国人が大挙して押し寄せ、日本の一等地を買い漁るかもしれない。日本全体が相対的に貧乏になり、老後楽しみにしていた海外旅行のための財力が残されていないかもしれない。
政府は大地震による被災マップを公表している。しかし、その被災は時間の流れからすれば一時的である。本当の苦しみは、福島原発で明らかなように、後々に襲う。大地震の後の塗炭の苦しみを少しでも緩和するよう、個人レベルでも備えが必須である。
この点、政府は一言も発していない。知らんふりなのだろう。
どうすればいいのか。外貨建の資産を保有することでしかないだろう。東日本大震災で首都圏は大きな被災をかろうじて免れた。それでも日本経済の受けたダメージは大きかった。南海トラフで大地震が発生すれば、東海から関西にかけての日本経済の中心部分に大きな影響が発生する。日本経済全体が大混乱するに違いない。
その時、日本の金融資産はどうなるのか。保険金支払いや復興資金の調達のため、日本が海外で保有する資産が売られ、国内に回金されるから、円高になるとの説がある。瞬間的にそうかもしれないものの、そこまで短絡的に考えず、多面的かつ時間の流れまでイメージして考えるのが望ましい。
まず、国内の生産が混乱し、もしかすれば主要な工場も破壊されるだろうから、日本からの輸出が激減する。海外からの物資の輸入が、生活物資に加えて復興需要もあり、増えるだろう。このため、貿易収支は赤字になる。海外からの旅行客も激減する。
次に、日本の株式が売られる。業績悪化が当然だからである。とくに冷徹な海外投資家が売るだろうが、彼/彼女らが日本株の30%を保有していることからすると、この影響は大きい。その売却代金は海外に逃げていく。
さらに、日本政府が復興のために巨額の予算を使う。所得減にともない税収も激減するため、財政が急速に悪化する。今でも政府は多額の債務を抱えている。それに拍車がかかる。現在、海外投資家の日本国債の保有額が徐々に増えている。それが売られるかもしれない。むしろ、地震直後、瞬間的に円高になれば、僕ならそれを絶好の売りチャンスととらえるだろう。
以上から、大地震は遅かれ早かれ円安をもたらすと考えたい。
このため、僕は資産構成を工夫している。政治経済的に(相対的にだが)安定している欧米先進国の債券、とくに国債の保有である。金利水準は低いが、ゼロの日本よりはましである。しかも大地震によって為替レートが大きく円安に振れたとすれば、僕は日本人の中で相対的に金持ちになれる(万歳!)。もちろん、命があればの話だが。
それでも外貨資産を保有することが不安だと言うのなら、平均的な日本人は円資産が多すぎる、そんな極端に円資産を持って不安がないのかと逆に質問したい。勤務先からもらう給与も、公的年金も円資産である。それも今だけでなく、将来にわたって円で入ってくる。その将来の見込み額を加えると、されに遺産相続も見込めるのなら、円資産だらけ、何やらまみれ、円まみれである。そんな状態がむしろ不安だから、僕は外貨資産を持っている。
いずれにしろ、身近に迫った大地震のリスクを考えて、一定割合の外貨建資産の保有を推奨しておきたい。

2019/06/30


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