読みもしていないのだが、金融庁が平均的な世帯で老後資金が2000万円(正確には1300から2000万円)不足していると報告書を書き、それが大問題化している。僕としてネットで知ったものの、読まなかったのは、「そらそうやろ」と思ったからにすぎない。
これもネット情報ながら、平均的な(夫婦2人の)高齢者世帯で、月々の支出26.4万円、収入20.9万円、不足5.4万円だそうである。この不足額を生涯にわたって積み重ねれば2000万円という単純計算になるらしい。
内訳を見ると、収入のうち、社会保障給付(主に年金)が19.2万円だそうな。厚生年金があればこの位になるのだろうが、基礎年金だけでは19万円にはならない。
支出で食糧費が6.4万円、日割り計算で0.2万円だが、「そんなんでやっていけるの」と思う。その一方、光熱・水道費1.9万円、交通・通信費2.8万円だが、光熱・水道費は「そんなに使うんや」と驚く。交通・通信費にいたっては、60代、70代、80代と年齢を重ねるにつれて、大きく異なっていくだろう。
いずれにしても、平均的な家計の姿だから、そんなもので描けないことが多々ある。金融庁を批判する前に、そこで示された平均的な姿を横目で見つつ、自分自身で自分の老後を考えてみるのが正しい。2000万円という数字だけに反応するのは短絡的すぎる。
もう1つは、「100年安心と公言していた公的年金」の評価だろう。そもそも、国民の誰が公的年金制度を、そこまで信じていたのかと疑問に思う。僕の評価とすれば、「公的年金を信じるのはあまりにもお人好し」でしかない。今までも公的年金は後退(縮減)の歴史である。些末な事実かもしれないが、事務ミスも多発していて、信頼を失ってきた。
さらに言えば、政府の肩を持つつもりは毛頭ないものの、100年安心という公言は年金制度のことであり、「公的年金だけで暮らせる」とは政府といえども誰も言ってなかったはずである。「年金制度がしっかりしているから、それを信じてほしい」という、気を持たせるような曖昧な言い方だったかもしれないが。
いまさら「年金だけで暮らせると信じていたのに、がっかりや」と叫ぶのは、批判のための批判でしかない。厚労省と異なり、金融庁がはっきりと公的年金の限界を示したのは、むしろ意義あることではないのか。
もっとも、金融庁は金融庁で、別の政策的な意図(勘ぐるに、貯金だけでは駄目で、証券投資をコアとする自助努力が必要だという信念)を持っているのは確かだろうが。
2019/06/12