日本と韓国の感情的な対立が続く。その感情が韓国側の行為にまで波及し、ついに日本の行為に出た。韓国の主力産業である半導体の製造に必須の材料について、供給を遅らせる作戦である。
供給を遅らせるのは、主力の原材料ではなく、微細な加工時に必要な化学物質である。日本のメーカーのシェアが高く、かつ(調べていないし、新聞にも書いていないが)金額的には少額の製品のようだ。
要するに、日本側のダメージが大きくなく、韓国側にダメージを与えたいように思える。その結果、今でも景気の悪い韓国が悲鳴を上げ、日本に妥協する。これが最良のシナリオだろう。そんな簡単に事が進むはずはないのだが。
少し視点を変えよう。今回対象となった製品の輸出入の許認可を取り仕切るのが経済産業省である。そう考えると、今回の措置は、韓国に対する制裁を隠れ蓑にした、我田引水の作戦ように思えてならない。
というのも、経済産業省は半導体や液晶の製造拠点を日本に呼び戻そうと必死になっている。今回の供給を遅らせる対象製品は、多分液晶の製造にも必須である(ネットで調べたかぎりでは、そうである)。つまり、韓国が強い半導体や液晶の製造が滞ると、日本の息絶え絶えのメーカーが復活するとのシナリオが浮かび上がる。
もう少し言えば、韓国が日本に対して「今までの行為を考え直します」と言わなくても、「そんなの知ったこっちゃない、本当の目的は別やしね」と、経産省は考えている。
そうだとすれば、今回の日本の措置は、客観的に考えてきわめて馬鹿げている。というか、悪質である。経産省が肩入れしている日本の弱小メーカーのために、隣国との関係をますます悪化させる措置だからである。
韓国や中国に対する日本人の感情は良くない。しかし、個別に付き合うと少し違った感情を持つ。とくに中国はそうである。韓国も、僕の付き合ったかぎりでは悪くない。
半導体や液晶で日本が負けた主因は、日本企業がトンマだったからである。それを棚に上げ、政府が企業間の関係に割って入るのは、猫や犬の喧嘩に加わるようなものだろう。まあ、猫や犬のほうが人間よりも素直で、実は知恵があるとの見解も成り立つのだが。
2019/07/03