川北英隆のブログ

反ESG行動が頻発

日本企業はESGに一斉になびいている。さらに、国連が提示したSDGsも大流行である。ESGとは、エコ(環境)、ソーシャル(社会)、ガバナンス(企業統治)である。SDGsとは「持続可能な開発目標」であり、エコや広い意味でのソーシャルを含む。
前々から、日本企業が一斉にESGやSDGsを受け入れる、「賛同する」と叫ぶ、そういう横並び的姿に疑問を感じていた。数年前まで無関心に近い企業が多かったのに、何がどうして、急にそんな「いい子」になったのか。
SDGsにいたっては、カラフルかつ大きなバッジを付けた姿が目立つ。僕も1つ、さる団体からもらった。ネコを飼っていれば鈴の代わりにするのだが(キラキラしていて鳥が逃げるかもしれないものの)、残念ながら今はどこかで眠っている。
どんなバッジか見たければ、アマゾンのサイトに入って検索すればすぐだ。
本当のESGとは何か。そのヒントはSDGsにある。たとえば、SDGsの表題の中のキーワード、「教育」、「水とトイレ」、「つくる責任、つかう責任」、「公正」、「陸の豊かさ」の意味や含意を知らなければならない。そのためには少しでも多く「現場」に入り、歩き、見なければならない。一般の日本の経営者やESGの担当者が、ESGのためにどの程度の努力をしているのだろうか。
日本企業が発展途上国に進出している。工場を建設して多くの従業員を雇う。その時、従業員の子供の教育に、どの程度の注意を払っているのだろうか。工業用水を使い、それを排水として流すときに、環境への配慮を十分しているのだろうか。むしろ、日本の工場はきれいにして、海外の工場はいい加減ではないのか。
ある人から、海外の工場の表彰制度があると聞いた。あまり知られていないようだが、このような制度をもっと展開すべきだろう。
https://school.jma.or.jp/seminar/award.php
企業が社会に気を配り、生活に革命をもたらした事例がある。家電、自動車、インターネットなど、大掛かりなものは別にして、もう少し身近なものとしては宅急便とポストイットを思い浮かべた。それらは、当初は何気なかったのだろうが、今や生活必需品である。
このようなサービスや製品が、社会生活を革新的に便利にするという意味からして、S(ソーシャル)に貢献している代表的な事例だろう。他に「これはどや」というのがあれば教えてほしい。
逆に、最近の日本では反ソーシャルな事例があると感じている。それは何かといえば、一般株主の権利を台無しにする事例である。ターゲットとする企業の40%程度の株式を保有し、あたかも100%を保有したかのように振る舞う大企業が登場している。
1つは、デサントの株式に対して公開買付(TOB)を実施し、株式保有比率を40%に引き上げた伊藤忠である。何故100%ではなかったのか。残りの60%の株主の権利がほぼ完全に無に帰すやりかたであり、社会的公正性、すなわちソーシャルとは正反対である。
もう1つはアスクルに対して、45%の株式を保有するヤフーが、株主総会で社長と独立社外取締役の再任を否決した事例である。その際、アスクルの社長のみならず、独立社外取締役候補の対案を出さなかったものだから、今のところアスクルの経営は宙に浮いたに近い。これもまた、ソーシャルとは正反対であり、残りの一般株主に対して非常に無責任な行動である。
両社はソーシャルとは何か、本当に考えたことがあるのだろうか。同時に、まだ行動に出ないまでも、両社のやり方を「素晴らしい」と思う企業が何社もあるように感じてしまう。
本当のESGとは何なのか。上場会社として、伊藤忠やヤフーの行動をじっくりと評価することで、ESGの意味を考えてもらいたいものだ。より積極的には、エコやソーシャルに関して、個々の企業としてどのような積極的な貢献ができるのか、真剣に考えてほしい。
単純に流行を追うことはコストがかかるだけで、何の役にもたたない。ESGを標榜する必要はどこにもない。宅急便やポストイットのようなサービスや製品を世に出すのが、真のESG企業である。

2019/08/30


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