学会の懇親会でサンチャゴ近郊のワイン醸造元を見学した(自費を払って)。市内中心部から南南東35キロ位である。訪ねたのはコンチャ・イ・トロ(Concha y Toro)である。
多くの訪問者で賑わっていた。観光コースの1つになっているらしく、醸造元に入り、チケットの購入を待っていると、いくつかのコースがあるとわかった。どう違うのかは不明だが、多分案内する場所の多寡だろう。というのも、我々は、コンチャ・イ・トロの創業者の屋敷、庭園、ぶどう園、白ワインの試飲、赤ワインの貯蔵蔵の見学と試飲というコースだったのだが、ストレートに試飲したいという観光客も多いはず。そういう僕も屋敷やぶどう園はどうでもよかったし。
コンチャ・イ・トロが醸造したワインでよく見かけるのがカッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)、つまり「悪魔の蔵」である。見学でも、その蔵に案内された。
一番良質なワインを保存しているとか。チリは地震が多く、保存していたワイン樽が壊れることもあるそうだが、この悪魔の蔵では壊れたことがないとか説明していたと思う。
悪魔の蔵とは、盗み飲みを防ぐために、「この蔵には悪魔が棲む」との噂を流したことによるらしい。その蔵の見学の後、赤を2種類試飲させてもらった。カッシェロ・デル・ディアブロのラベルの付いているのよりも上のクラスだった。確かに美味かった。
25年は前になるだろうか。今も営業をしている東京は小伝馬町付近の、ワインでも日本酒でもなんでも揃っている酒場でワインを飲んだとき、出てきたチリワインがきわめて美味かった記憶がある。記念に瓶をもらって店を出たのだが、すっかりいい気分だったのでタクシーの中に忘れてしまった。今でも思い出す度に残念に思う。
その時の味は再現されなかったものの、試飲したワイン、なかなかのものだった。東京に住んでいたとき、カッシェロ・デル・ディアブロは手軽に飲めるお気に入りだったし、チリワイン=安物との評価は捨てるべきだろう。
写真はその悪魔の蔵の中である。ワイン樽がいっぱい並んでいるだけで、美味くも何ともないが。
2019/08/08