金曜日、アメリカの株価が大きく下げた。中国が追加の報復関税を発表したことを発端に、アメリカと中国の貿易戦争、最先端技術戦争に拍車がかかるとの懸念が強まった。
最初に、現在の株価(取引日の終値)の位置を確認しておく。
アメリカの株価についてNYダウで見ると、7月中旬の高値(史上最高値でもある)から6.9%下落している。とはいえ、昨年12月に急落したときの安値からはまだ16.9%高い位置にある。今のところ、米中経済戦争がアメリカ企業全体の業績を大きく引き下げるほど、大きな影響を与えていないからである。
日本はというと、低迷している。日経平均株価は昨年10月の高値を抜けていない。もちろん12月の急落時の安値を割り込んではいないものの、それを7.3%上回っているにすぎない。日本企業が米中経済戦争の影響をすでに受けており、大幅な減益になる企業が多出しているからである。来週、日本の株価は金曜日のアメリカ株の下落を受け、12月の安値に接近する可能性が高い。
この日米の差がどこで生じるのかといえば、日本の場合、消費に直接関係している企業が比較的少ないことにあろう。部品、設備投資関連の企業が多いため、景気の変動から大きな影響を受けている。また、消費に直接関係している企業があったとしても、アップル、アマゾン、グーグルのようには経済全体を力強く牽引できていない。
まだ大きく下落していないアメリカ株だが、今後は厳しさを増すだろう。大統領選挙を控えトランプは経済を重視すると考えられるものの、それよりは「中国叩き」のほうをより重視しているように推定できる。中国を叩くことがトランプだけではなく、アメリカ全体の目標と化しているためだろう。このため、中国叩きを続けることによる人気上昇が、経済が少々悪くなることによって引き起こされる不人気を打ち消し、余りが生じるとトランプが考えているようだ。
アメリカ経済は景気後退局面を迎えるだろう。加えて、大統領選挙を控え、トランプとしては中国叩きを止めるわけにいかない。中国にも面子があるし、習近平としても首がかかってきている。以上からすれば、経済戦争に伴う景気後退局面から簡単に脱却できる見込みを立て難い。
景気後退を受け、アメリカの株価も下落基調に入るだろう。簡単に景気後退から脱却できないとの読みが投資家全体に広まれば、株価が上昇に転じるきっかけがなかなか得られない。一方の日本の株価はといえば、アメリカ以上に厳しい。このことは、足元の日米の株価動向の差異が如実に物語っている。
写真は2018年元旦以降、今週末までの株価推移である。灰色の線がNYダウ、赤い線が日経平均株価である。資料はQUICK社のAstraManager。
2019/08/24