川北英隆のブログ

関電問題と原発のゼロクリア

関西電力が泥沼にはまった。津波でなかったのが不幸中の幸いか。関電(感電ちゃうで)に友達や知人がいるので何とかなってほしいのだが、それにしても経営がなっていない。
5年間、20人で総額3.2億円を、原発が立地する高浜町の元助役から受け取っていたとか。そのうち、総額1億円を超えるのが2人いるとも。通常の贈答として常識の範囲を天文学的に逸脱している。
僕の大学の知人が卒業後、最大手の一角に位置する建設会社に就職した。10年くらいして再会したときだったか、お中元や歳暮の予算が10万円以上/人・回だとか豪語していた。工事の受注のためである。「ひどい業界」と思ったが、今回の事件を聞くに、その金額なんてゴミみたいなものに思えてしまう。
今回、元助役の関連会社が関電から工事などを受注するために、もしくは受注したお礼に、売上高の一定割合をキックバックしていたとみられても仕方ない。原発を巡る業界の慣行がそうなっているのではなかろうか。
関電の高浜町の場合、その元助役が特別だったのか。その助役の前はどうだったのか。他の原発立地の市町村はどうなのか。他の電力会社は。これらについて監督官庁である経済産業省は調査する義務がある。東電の福島原発の問題といい、根が非常に深い予感がしてならない。
関電に話を戻すと、個人として受け取りを拒否するのが難しいのであれば、会社として断るべきである。「社内規則で受け取れない」と言えばいいだけである。その場で返せなかったのなら、「とりあえず預かるが、後で然るべき対応をする」といって、渉外担当部門が事務的に返せばいい。そんな簡単な対応の手順作りも考えられないで、よく幹部になるものだと思う。本当のところ、そこまでアホちゃうやろから、より深い闇があると思えて仕方ない。
原発の立地は一般住民の拒絶反応がきわめて強い。立地する市町村として、強いリーダーシップが求められるとともに、最終的には、端的に言うのなら「これだけ多くの利益が転がり込む」との金銭的なメリットを強調し、住民を説得するのが一般的な筋書きだろう。付け加えれば、金銭的なメリットを強調する役割は市町村の有力者である。もしくは、強調し、原発を誘致することで有力者になりえる。
とすれば、今回の関電と高浜町の関係は異例だとしたとしても、電力会社と市町村の間に非常に密接な関係が形成されやすい。この意味でも、経産省は電力会社を徹底調査すべきである。
日本の電力業界は、福島以降も原子力発電の再開に拘泥してきた。この間、太陽光や風力などの発電で、世界から徹底的に遅れてしまった。その原子力発電、虎の子だとの主張は、実は電力会社の幹部および立地市町村の一部関係者の利益だけのことだったのかと悟られてしまったような。
経産省として、電力行政をどうするのか、グローバルかつ国民の利益の観点からもっと真剣に考えるべきである。そのためには、電力会社をはじめとする既存の関係者の立場を尊重しての「原子力ありき」から出発してはダメである。
最近、経産省が関わった産業政策(たとえば液晶、半導体)の結果は碌なものではない。その上に電力行政を積み上げられたのでは国民としてたまらない。液晶や半導体は輸入できるが、電力はそうはいかない。それとも、ロシアや韓国、中国との間に高圧送電線を張るのか。これこそ最大の経済的意地悪の素材になってしまう。

2019/10/02


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