昨日、毎年の恒例になりつつあるセミナー、あすかコーポレイトアドバイザリーの協力を得た京都大学のセミナーを開催した。今回もパネルの司会を務めつつ、非常に意義があったと感じた。
題名は、「政策主導で規制が強化される企業ガバナンス--企業と投資家はどう対応するべきか?-」である。
このセミナーのセッティングの片棒を担ぎながら、「意義があった」と評価するのは日本人としてどうかと思うのだが、欧米人なら、中国人でもそうだろうが、意義があることを意義があると主張して何が悪いのだと言うに決まっている。むしろ彼らなら、意義がなくても意義があると言うに違いないし、その意義が本物かどうかを見分けるのが彼らを雇った者の責任となる。この点、日本の経営の在り方とも関係する。
それはともかく、登壇者は小林いずみ、三瓶裕喜、光定洋介の各氏と僕だった。最初、小林さんに問題提起的な基調講演をしてもらい、その後で4人でディスカッションをした。
テーマは、1.企業ガバナンスにおける投資家の役割(対話、議決権行使のあり方など)、2.取締役会の形態(人数、指名委員会の設置の是非、ダイバーシティなど)、3.機能する取締役会とは(どういう議論が、どういうふうになされるべきか)、4.まとめとして日本企業は変わったのかの4つだった。
これらの議論は、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが制定されてから年月が経ったことを受けた議論である。言い忘れたが、あすかコーポレイトアドバイザリーの協力に基づくこの京都大学のセミナーは、2つのコードの制定の動きを受けた始まったものであり、今年で6回目だった。
基調講演とパネルの状況をまとめるのは止めるが(大変だし)、僕として印象に残った発言だけを書き留めておきたい。
小林さん:テーマ自身、小林さんの問題提起を受けている。その上で、ダイバーシティが必要だが、それについて、女性とか外人とかが必要との議論に偏るのではなく、若い世代を入れることも重要なのではとの発言があった。もう1点、利益を生み出す事業であっても経営の方針と合わなければ、やらないとか売るとかの決定(取締役会での議論)が必要だと。この点、資本コストの議論とも関係する。
三瓶さん:企業の対話に携わる観点から、社外取締役と投資家の対話、影の部分の議論(取締役会でペンディングになったり否決されたりした案件があるのかどうか、バッドニュースが提供されているのかどうか)など、具体的な事例を多数示してもらった。日本企業に関して、「全体としては変わってきたが、企業間の格差が拡大している」と。
光定さん:日本の特色である「恥の文化」を捨てるべきだと強調していた。たとえば、「取締役会で否決されるのは恥」という意識である。取締役会の議論で、社外取締役がCEO(社長など)に意見する場面もあってもいいとも。いずれも、日本的な奥ゆかしさというか、表沙汰にしないというか、その文化の否定であり、むしろ主張すべきことは主張するとのスタンスである。
僕として、3人と大きな意見の相違がなかったと思っている。まとめとして、企業も投資家も大きく変化している。とはいえ、大きく取り残された(もしくは、コードの本質を理解していないか、頑なな)企業や投資家も多数いる。
コードに従う必要性はまったくないし、コードを100%満たしている企業や投資家は、個性がないか、とり繕っているという意味で、むしろ異様である。コードの意味を咀嚼し、自分で考えて行動してほしい。これが今回のパネルの一致点である。
2019/10/08