かつての部下、9歳年下のIS君が医者になった。会社を辞めて医学部に入り直したのは聞いていた。無事医者になったのかどうか、(時たまだが)心配していたところ、知人から連絡があり、北海道で医者をしているとのことだった。
その彼と食事をした。観光で海外旅行をした帰り、東京に余分に一泊してくれた。どんな医者生活を送っているのか、一端を知ったと思う。
医者として勤めているのは旭川からさらに1時間少しかかる市立病院である。人口2万人くらいの市だとか。
病院の患者は老人が多く、80歳でも若いらしい。そんな老人の多くは近くの老人ホームに暮らしていて、病気でしばらく入院するのだが、治ったら帰る。でも次の病気でまた入院し、しばらくして帰りの繰り返しだとか。
患者の最高齢者が103歳だったか100歳超えだと語っていた。そんな超高齢だから、「長生きしようね」と言っても、「もう誰も知り合いがいない」とかで、85歳くらいの患者に喜んでもらえる会話も通用しないらしい。
普段の生活についても聞いてみた。人口の少ない町で医者をしていると、有名人になるらしい。町中で患者や患者の家族から声を掛けられる。ラーメン屋に入っても呼び掛けられる。それがなかなか大変なようだ。「こんにちは」だけでは済まず、「具合はどうです」をはじめとして、一言二言しゃべらないといけないのだろう。
姪が来て(彼に姪がいるのかどうかは知らないが)、町を案内しがてら一緒に歩こうものなら、翌日の地元紙に「○○先生、若い女性と親しげに歩く」と書かれかねない。実際、彼が医者として私立病院に配属された時には、地元紙の一面で大きく紹介されたそうだ。
そんな地元との濃い人間関係、好き好きだろう。かつての日本社会の密な関係を残しているのかもしれない。
いずれ北海道を訪ねることもあるだろう。その時には案内してもらおう。各地の旅行で愛用してきたベストを着て。
「○○先生、暇そうでみすぼらしい男性と怪しげに歩く、何か事件か」と書かれそうだが。
もう1つ思い出した。かつてIS君は、「ドクター・イシャク氏の説によると・・」と、よく事象の解説をしていた。そのIS君、北海道で本物のドクター・イシャク氏になったのだと実感した。
2019/10/27