証券マン/ウーマンなら、また銀行マン/ウーマンで投資信託の販売担当者なら、責任者なら、自分でその投資信託を買うべきである。買わないのなら、その理由を明らかにすべきである。
彼ら/彼女らに「この投資信託を買ったら」と勧められたら、逆に「あんたは買ってるの」と質問するのがいい。「まだ」と返答されたのなら、「何で」と次の質問を投げかけて、ついでに、「会社の人は買ってるの、社長は、頭取は」と畳みかければいい。
以前も書いたと記憶しているが、日経新聞朝刊の中程、証券欄は酷いものだ。何が酷いのかというと、投資信託の価格面である。ほとんど意味のない細かい数字の羅列が2面ほどある。
僕はその紙面を墓標と呼んでいる。というのも、残高が減っていくだけの、ほぼ存在価値のない投資信託が、その紙面の大部分を占めているから。流行りの言葉で表現すれば、環境に悪い。紙、すなわち森林資源の浪費、二酸化炭素を増やすだけである。
それもこれも、アセットマネジメント会社が流行りのテーマで投資信託を作り、それを証券会社が個人に売ってきたからである。個人に無尽蔵に投資資金があるわけでないから、証券会社は投資信託の乗り換えを勧める。乗り換えはタダではなく、証券会社の儲けになる。乗り換えるために解約された投資信託は、それでほぼ息が絶える。その投資信託が存在した記録として、墓標だけが新聞の紙面に残る。
そんな変なことを防止するには、投資信託の販売担当者に、また証券会社の社長や銀行の頭取に投資信託を持ってもらうのがいい。
そうすれば、「またまた新しい投資信託が出たので、これも買ってもらわないと」と、個人営業担当役員が社長や頭取にお願いするわけにいかないから、「これぞ」という自信の投資信託しか世に出ないだろう。社長や頭取にどやされないようにと、投資信託の投資収益率も向上するかもしれない。
紺屋の白袴は忙しさの喩らしいが、株価が順調に上昇し、債券の金利も高かったかつての良き時代には、投資信託を勧められた投資家は、証券会社の兄ちゃんや姉ちゃんが投資信託を買っていなかったとしても、とくに気に留めなかっただろう。「紺屋の白袴かな」で済まされた。
今は違う。株価の上昇率は上場企業といえどもピンキリ、債券に金利なんてないに等しい。そんな時、証券のマエストロであるべき証券マン、銀行マンが「紺屋の白袴」で出てきたとしよう。と、「この店の染め物、下手くそか、インチキか、どっちかなんや」と客が逃げるに決まっている。これが世の中の常識である。
2019/10/28