ふと思ったことがある。「宝くじの還元率と高額当選金額の関係」である。最高当選金額がどんどん上がっているようだが、これが朗報なのかどうか。
僕は宝くじなんて買ったことがないし、買おうとも思わない。競馬や競輪などの公営ギャンブルの経験もない。数回、物は試しというので、酒を飲んだとか興に乗った勢いで、パチンコとラスベガスのカジノを経験した。両方とも数百円から数千円の「勝ち」で終わっていて、それ以上の追求はしていない。
何故なのか。そもそも、公営ギャンブルの場合、平均的に「場代分」だけ負けるからである。僕自身、ギャンブルの天才でもないだろうし、ひょっとして才能があるのかもしれないのだが(損をしていないから)、そんな才能を磨くよりも、株式投資で儲ける方がきわめて簡単だからである。
もう少し言えば、宝くじを含めた公営賭博はマイナスサム(平均的に賭博人が負ける)ゲームである。株式の場合、売買の手数料が数%からゼロ近辺であるため、大雑把にはゼロサム(投資家の損得を平均すると儲けも損もない)ゲームである。長期の株式投資を含めれば、経済成長を前提にするかぎりにおいて、プラスサム(平均的な投資家が儲けられる)ゲームである。
宝くじに話を戻す。ウイキペディアによれば、「当せん金付証票法」という法律があり、宝くじの還元率、すなわち「当選金額の総計」と「宝くじ購入額の総計」の比率を50%未満にするようにと定められているらしい。公営ギャンブルのすべてに法律があるかどうかは調べていないものの、場代を考えると(少なくとも人件費がかかるわけだから)、掛け金の全額が返ってこないのは当然である。
そうなら、最高当選金額をどんどん上げていけば(よく知らないが、例えば1億円を5億円にしたのなら)、何が生じるのか。宝くじ購入額の総計が変わらないとして考えれば明らかなように、その最高当選金額を支払うために準備すべき金額が増えるわけだから、それ未満の当選くじ(ちょこっと当選)に割り当てられる金額が少なくなる。正確に書けば、ちょこっと当選に割り当てられる金額が少なくなり、その結果としての現実的対応としては、ちょこっと当選の金額の引き下げというよりも、その当選率を低下させることになろう。
宝くじを販売する側から言わせると、「宝くじ購入額の総計が増えれば、その増えた分を最高当選金額に割り当てるので、ちょこっと当選に影響はない」のだろうが、これはまやかしである。増えた分を買う者と、増える以前の分を買う者との区別は誰にもつかない。そうだから、やはり「ちょこっと当選に割り当てられる金額が少なくなったな」と見えるはずである。
いずれにしても公営ギャンブルに足を踏み入れないに限る。
思い出したのは、僕は公営ギャンブルのおかげで若い頃(通産省、今の経産省に出向していた時)、当時としては相当の(10万円ちょいだったかの)原稿料をもらった。通産省が公営ギャンブルのうちの競輪の胴元だからである。公営ギャンブル、いずれも役所が胴元になっていて、ある意味で彼らの別予算(うがった表現を使うと裏金)になっていることに注意が必要だろう。
2019/11/22