最近の日経新聞を読んでいると、「バリュー株」に関するコメントが多いように思う。バリユー株とは、割安株、お値打ち株であり、お宝株、掘り出し株とのニュアンスがある。
表現を「お値打ち株」に統一しておこう。では、お値打ち株かどうかの判定をどうするのだろうか。
これに関して、いろいろと方法がある。
投資の神様と称されるバフェットのように、投資する値打ちが本当にあるのかどうか、企業を徹底的に調査するのが1つの極端な例だろう。
これと対極にあるのが、1つの指標を重視して判別する方法である。簡便法というか、アンチョコというか。
その1つの指標とは、PBR(株式時価総額/純資産)である。PBRが相対的に低いとお値打ち株になる。というのも、株価が純資産を正当に評価していない、そう考えるからである。極端な例では純資産よりも時価総額が低い、つまりPBRが1倍未満、言い換えると企業の解散価値よりも株式の時価が低い場合がある。
ここでは論じないが(関心があるのなら来月発売予定の『京都大学の経営学講義4』を見てほしい)、PBRが1倍を割れている理由の多くは、その企業の事業の利益率が資本コスト未満だからである。別の表現を用いると、事業から得られる利益率が投資家の期待(要求)を下回っている。
つまり、投資家から見ると期待を裏切っている企業である。資本コストをコストとして認識し、会計上の(資本コストをコストとして認識していない)利益から差っ引くと赤字になる企業、ダメ企業だとも言い換えられる。
PBR1倍を割れ企業のすべてをダメ企業とは言わない。本来評価されて当然なのに、現実には1倍を割れている場合もある。しかし、分析してみると、PBR1倍割れ企業の相当割合がダメ企業でもある。
もう1点、付け加えておかないといけないのは、東証第一部上場企業の半分がPBR1倍割れだとの事実である。そして、PBRでお値打ち株を探す場合、相対的にPBRの低い企業を選ぶのだが、実践的にはPBRが下位1/3にある場合をお値打ち株とする方法が多く用いられている。
とすれば、PBRに基づいてお値打ち株を選別すると、日本市場ではPBR1倍割れ企業がすべてになる。ここで、「何や、それ」と思わなければいけない。「お値打ち株やと思ったのに、ダメ企業やん」である。
繰り返しになるが、PBR1倍割れの中には、本当の意味でのお値打ち株が混じっている可能性はある。でも、他の多くはダメ企業である可能性がきわめて高い。本来は企業調査を交えてお値打ち株を探すべきである。
結論である。PBRに基づいて機械的にお値打ち株を選んでしまえば、お値打ち株は掃き溜めに鶴的な存在でしかない。「クワバラ、クワバラ」である。
2019/12/07