コロナちゃんの影響、純粋な感染者の生死の問題から経済活動の生死の問題に発展している。政府が中・小規模事業者に対する無利子・無担保融資を表明したのはその一環である。本当のところ、深刻な事態は中・小規模事業者だけにとどまらないのだが。
最悪な目にあっているのが海外からの旅行者を当て込んだ小規模業者の小規模ホテルだろう。京都でも雨後の筍というよりも季節外れの筍のように鉛筆ホテルができている。変な外人にウロウロされたら困るなと思っていたところ、逆にそのホテルが倒産し、建物が廃墟になる危険性が出てきた。
これは局地的な経済への影響にすぎない。むしろ注目すべきは経済全体に深刻なダメージである。このダメージが今後の世界経済の転換をもたらすかもしれない。
中国が発表した貿易統計では、1月と2月の輸出合計が前年同期比17%の減少になった。1月と2月の合算というのがミソである。中国が武漢の閉じ込めをはじめとする大作戦を開始したのが春節つまり1/24頃から、国外団体旅行を禁止したのが1/27だった。中国経済の1月はほぼフル活動に近かったと思っていい。1月の輸出がほぼ前年並みだったと単純に想定すれば、2月の輸出は34%落ち込んだことになる。
今でも中国で正常に稼働していない工場が多いらしい。日本企業の場合、中国がコロナちゃんの逆輸入を恐れ始めたため、日本に退避した幹部が中国に簡単に戻れなくなり、余計に大変な事態にある。
欧米でも感染者数が急増している。イタリアは別格として、ドイツやフランスも日本(クルーズ船除き)を超えてしまった(日本の検査処理量がお粗末すぎ、実態よりも感染者数が少ないだけかもしれないが)。アメリカも急増を始めた。こうなると、中国は欧米からの旅行者の管理にも厳格にならざるを得ないだろう。
言うまでもなく、この中国が与える経済的な影響は非常に大きい。需要量が大きいだけでなく、生産活動においても世界の工場になっている。パソコンやスマホの多くは中国で生産されている。その供給が滞る。もっとも、紙類とその原料であるパルプや木材について残念なことに、世界は中国に依存していない。
日本の経済活動は中国に多くを依存している。その比重は欧米以上である。
国内の人口が減少しているから、完成品を作っても、それを大量に国内で売ることは難しい。しかも、家電、パソコン、スマホに象徴されるように、国内の完成品メーカーは自動車を除き、壊滅状態に近い。だから日本の製造業は部品メーカーとして生き残りの道を探っている。
自動車の部品はともかく、パソコンやスマホの部品は多くが中国に輸出され、そこで製品に組み込まれ、中国から日本を含めた海外に輸出される。ここで、コロナちゃんの影響によって中国での生産活動が大きく落ち込めばどうなるのか。
2月、3月と中国の生産活動が半分になれば、それだけで1ヵ月分の生産が消える。1年は12ヵ月だから、1÷12で8%強の生産の落ち込みになってしまう。隣国の中国がまず新型コロナの風邪を引いた。それだけで日本経済が肺炎になり、呼吸困難になってしまいかねない。この意味で、次に日本に襲来する欧米の影響が不気味である。
当初、日本の株式市場は楽観的だった。コロナちゃんがすぐさま通り抜けると思っていたし、日銀が買い支えてくれると期待した。
でも、コロナちゃん問題は長引きそうである。多分、ある程度有効な治療方法が見つからないと安心材料にならない。この安心材料がないかぎり、コロナちゃんによって経済活動が阻害され、企業業績が落ち込み、それが株価の足を引っ張る。日銀の買い支えも、それは決して企業業績を引っ張り上げるものではなく、コロナちゃんの熱に解熱剤を与える効果しかない。
繰り返しに近いが、株価が上昇に転じるのはある程度有効な治療方法が見つかった時である。市場の状態の確認を怠ってはならない。
2020/03/08