昨日、日銀が金融政策決定会合を前倒しで開き、追加の金融緩和を決定した。その政策とは、上場投資信託(ETF)の購入目標額を12兆円に倍増するほか、不動産投資信託(REIT)、CP、社債の購入の増強などである。その評価はいかに。
一口で言うなら、すべてを書くのもアホらしいような追加政策である。これは日銀のせいでもないだろう。すべての政策を出し尽くしているから、もはや「無い袖は振れない」に近い。むしろ、日銀という中央銀行をここまで追い込んだ政府の無策を糾弾すべきだと思ってしまう。
客観的に言えば、政府の政策の方向感が間違っている。その政府に追随する日銀が可哀そうかもしれない。
一例は消費税の引き上げと、その後の消費の低迷に対しても「緩やかに回復している」と、景気に対する楽観的な判断を変えなかったことである。これを「令和の大本営発表」と書いてみた(2/19)。
もしも本当に景気が緩やかに回復しているのなら、日銀として株式(ETF)を買うべきではなく、むしろ売っておくのが正解だった。僕としては、政府の景気判断に関わらず、日銀が何故株式を売らなかったのか不思議なのだが。
今回のコロナ問題に対して金融政策は無力である。現在、旅行会社や零細旅館をはじめ、コロナに起因する需要の激減によって倒産しそうな企業群がある。金融政策として意味があるのは、このような企業群に対する緊急融資であり、それを意図して日銀が資金供給を行う程度だろう。
効果があるとすれば、政府による財政出動である。つまり、需要が極端に落ち込んでいるから、政府が意図的に需要を作り出すべきである。とはいえ、残念なのは日本政府の懐事情である。
本当の意味で景気が回復過程にあった時、政府は税収が増えたことに喜んでしまい、緊縮財政を忘れてしまった。この結果、国債残高の減少が実現しないどころか、依然として増え続けている。
コロナの問題により、新年度の税収が大幅に減ることは火を見るよりも明らかである。その上に財政出動すれば、また案として浮上しているらしい消費税率のカット(たとえば半分の5%にする)を実施すれば、たちまち財政赤字が急拡大する。
この結果、国債を大幅に増発しなければならなくなり、財政悪化に拍車がかかってしまう。国債の増発分を日銀に買ってもらわないといけなくなる。今でも国際的に評判の良くない日本の財政状況とそれを支える日銀の関係が(戦前、軍事費捻出のために国債を発行し、それを日銀に引き受けさせるのと相似的な関係が)、国際的な信認問題に結びつきかねない。もしも日本の信認が失われれば、日本売りになってしまう。
国際的な信認の失墜までは想定したくないが、可能性が徐々に高まっているのも確かである。ここで南海トラフが動けばどうなるのか。そんな最悪のシナリオも考え、準備と行動をすべき段階なのかもしれない。杞憂であることを祈るばかりだが。
2020/03/17