20日、アメリカの原油(WTIという品種)先物取引で価格が1バレル(159リットル)当たり「マイナス37.63ドル」になり、前日比55.9ドル下落した。一時、マイナス40ドル台にまで下がったとか。原油を買うと現金がもらえる。嬉しいことなのだろうか。
なお、WTIとは、ウエスト・テキサス・インターミディエートの略であり、アメリカでは標準的な原油である。
この取引、マイナス価格の原油を買い、現金を受け取るまではいいが、原油そのものも付いてくる。問題は、その原油をどう処分するかである。川や海に捨てられれば簡単なのだが、そんなことをすると御用となり、牢屋に放り込まれる。
今日の新聞記事を読めば分かるように、誰も原油を引き取りたくなかった。だから、川や海に原油を捨てる代わりに市場に捨てたのである。投げ売りである。
株式や債券の場合、保管に困ることは少ない。昔であれば、株式や債券は「紙」であり、保管する金庫が必要だったから、困ることも多少生じたかもしれない。
少し個人的な経験を書いておくと、就職して最初の仕事の中に「金庫に入る」というのがあった。資金を貸し付けるに際して担保を徴求していたから、その担保の保管である。建物の地下に大きな金庫があり、金庫全体の鍵とダイヤル錠の番号の管理者がいて、さらに内部には部門ごとの金庫があった。
現在の株式や債券の場合、特殊なケースを除いて「紙」がなくなった。コンピュータが株式や債券の権利を管理するシステムになっている。
この点で、原油、金属、農作物は現物が必須である。人間、空気を食べ、空気を燃やして暖を取り、空気で建物を造るわけにいかない。その現物が右から左に捌ければいいが、そう簡単でない場合も起こりうる。今回も、右から入った原油がうまく左に流れなかった。原因はコロナ問題だけではなく、生産過剰が根底にある。
このような異常な急落になったのは、20日が「5月物(5月に引き渡す原油)」の最終取引日だったからである。言わばババ抜きゲームになったと考えてもいい。このため、その他の引き渡し月の先物価格は比較的落ち着いていたという。
それはともかく、原油などの取引価格では、保管料(倉庫料)、輸送費など、金融商品にない要因を考えないといけない。この教訓になったはずだ。商品価格の理論では明らかなことなのだが。
このめったに起きない現実を記録しておくため、以上のブログを書いておいた。
2020/04/21