川北英隆のブログ

日銀の株式保有と出口の難問

現在、日本の中央銀行、日銀がいくら上場株式を保有しているのか知っているだろうか。つい先日の新聞には確か32兆円と書いてあった。これは3月末時点でのこと。推計してみると、先週末で約40兆円、上場株式全体の6.2%となる。日本で1位か2位だろう。
日銀の株式保有はほぼ上場投資信託(ETF)の買入による。多くは東証1部と同じ株価変動になるように、株式市場全体を買っていると考えていい。
2月以降4月にかけ、コロナ問題によって株価が大きく下落した場面でも、日銀は大量に買い支えた。このため、この数ヶ月で株式市場全体に対する保有比率を一気に高めた。さらに、最近の株価上昇によって、保有時価総額も増大した。
この日銀のETF買入は歓迎すべきなのだろうか。株式を保有している者にとって、僕もそうだが、株価の下落を止めてくれる日銀の行動は好ましいように見える。
でも、日本のバブルの頃(1980年代後半)を思い出してほしい。とお願いしても、今から30年以上前の昔話に近く、50歳前後の者でないと記憶にほとんどないか。
当時、(多少の例外を除いて)誰もが株価と地価の上昇を喜んだ。大金持ちになった気分に満悦した。一種の自己陶酔、つまりユーフォリアだった。この数年間のユーフォリアのおかげで、その後の少なくとも四半世紀、日本は苦しんだ。今もまだ、苦しみから完全には抜け出せていない、そうみなすことも可能である。
思うに、日銀のETF買入は一種のモルヒネ的麻薬である。どうしようもない痛みの時は仕方ないとは思うが、普通の状態ではもちろんのこと、多少の病気でも使ってはいけない。それなのに昨年の秋から暮にかけ、世界の株価がミニバブルではと言われていた時にも、日銀はETF買入を定期的に実施していた。
そもそも、40兆円もの株式を今後どうしようとするのか。世界を見渡しても、先進国のちゃんとした国の中央銀行が株式を保有している例はない。日銀は、いずれ40兆円もの株式を売るのだろうか。「売る」とアナウンスすれば、保有規模からして株式市場に大きな衝撃を与える。
とすれば、仕方なしに持ち続け、何かの機会に株価が下落すれば、政府の依頼を受けて買入を再開するのだろうか。そんなことをしていると、日銀の保有総額がますます膨れ上がり、株式市場に対する支配力がどんどん高まっていく。
日銀として、どこに出口を見出すのか、妙案を考えておく必要性が急速に高まっている。
この日銀のETF買入の一部の問題についてはニッセイ基礎研究所の「年金ストラテジー」に寄稿した。次にある。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64530?site=nli
また、出口については、僕の半ばジョーク、半ば本気のアイデアが日経新聞に引用されている。5/19の梶原記者のコラムである。コロナ対策として10万円/人を配るのなら、10万円相当のETFを配ればというものである国民1人10万円相当で12兆円になる。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59245580Y0A510C2TCR000/
以上について関心があれば読んでいただきたい。

2020/06/07


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