今年3月期決算企業の株主総会も山場を越えた。コロナ問題によって決算数値がきちんと出揃わなかった企業を除き、6月末で総会が終わった。「でも変や」と思う個人株主が相当いるはず。というのも、株主総会に出席してもお土産がなかったからだ。
これまで、株主総会に出席した株主にお土産を手渡す企業が多かったと思う。僕自身、株主総会がどういう形式で行われるのかを知るため、何社か出席したことがある。せっかくの時間を割き、交通費も出して出席するのだから、興味度が同じなら、「そら、お土産付きの会社やな」と考えなくもない。せこいかな。
株主総会のお土産、大したことはない。菓子類が多く(自社製品を手渡すとこもあると聞くが、出席したことがない)、せいぜい2000円程度か。総会が2時間あるとすれば、時間あたり1000円、マクドのバイト代程度である。会社側としても、交通費の代わりと考えているのだろう。つまり企業側に出席料という気持ちがないのだから、株主が土産のあるなしで文句を言っても仕方ない。
少し脱線ながら、ついでに思い出した。総会後に意見交換のための会食(昼食)を設定している企業もあった。「どうせ立食かな」と思ったし、その会社に言いたいこともあまりなかったので(まあまあの投資収益率だし)、食わずに帰った。
そのお土産、今年は「廃止します」という企業が多かった。そもそも、少し前から「今年から廃止します」という企業が増えていたから、コロナ問題をチャンスに、一気に廃止したのだろう。消費者向けに製品やサービスを提供する企業の場合、ファン作りの意味合いもあるだろうから、来年か再来年、コロナ問題が収まったとして、復活させる可能性もあるだろうが、多くは廃止のままだろう。
「お土産が廃止なら、株式を売る」との意見もあるらしいが、本末転倒でしかない。老人が暇つぶしに総会に出て、お土産をもらうのを楽しみにしていたのに、その土産がなくなって「何やねん、茶菓子も出んのかい、縁切りや」と怒るようなものか。多分、ペットボトルのお茶くらいは机の上に置いてあるだろうし。
僕が出席した株主総会の印象からすると、「高価な会場を借りて大勢が集まる値打ちなし」である。某消費者向けサービス提供企業の株主総会の場合、そのサービスの利用方法に対する注文や質問が続いた。馬鹿馬鹿しくなって(お土産ももらっていたことだし、「これじゃあ、マクドでのバイト料にも届かへん」と思ったこともあり)、途中で退出した。
お家騒動的な議案がないのなら、事前の議決権行使で十分である。プロ投資家は総会に向けて企業を訪問し、意見を述べているはずである。多分、株主総会に出席するプロ投資家は少ないのではないか。
日本の法律(会社法)は形式的すぎるし、ネットの時代に対応できていない。企業もまた、「配当を株主総会で決議する」という形式を後生大事にしてきた。コロナ問題を良い機会とし、これらの形式を改めるべきである。
配当は取締役会で決め、株主総会の案件としないのが一番である。そうすれば、配当は決算数値が固まった段階で支払ってもらえる。株主総会で一番重要なのは取締役や監査役の選任決議である。できれば新任候補には株主総会で抱負を述べてもらい、その上で選任の賛否を投じたいと考える個人株主が多いのではないだろうか。また、配当に不満なら、取締役の重任候補に反対すればいいし、株式を売却してもいい。
本来の株主総会とは、事業の執行代表者(日本の場合は社長)が企業の現状、課題、方向感などを自分の言葉で株主に向かって述べる場だと考えている。それがあれば、株主総会、お土産なんて不要である。入場制限して、入り切らなければネットでグローバルに中継してもいい。質問もネットで受け付ければいい。
有名なところでは、アメリカのバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の株主総会がある。ウォーレン・バフェットが何を話すのかを聞くため、ネブラスカ州オマハの田舎(行ったことがないので単なるイメージ)に大勢の株主が集まるという。僕の知り合いもオマハに行って感動したとか。
以上、お土産から相当逸れてしまった。でも今回のコロナ問題、本来の株主総会とは何なのか、じっくり考える、そして改革を図るいい機会を与えてくれたと思っている。
2020/07/05