表題の「変化なし」はオーバーなのだが、かといって間違いではない。株価を分析すれば、投資家がそう評価していると結論できる。というのも、誰も予想していなかったコロナ出現に対して事前の対応はできない。企業間の適応力の差が如実になったと考えればいい。
株価の分析結果を示しておきたい。2008年9月のリーマンショック以降、株式市場には構造的な変化が生じている。
簡単に言えば、1つに、欧米市場との比較で、日本市場の株価上昇率が大きく見劣りすることである。日本企業全体の適応力とバイタリティーの欠如である。
もう1つは、日本市場においても格差が拡大していることである。誰もが認める優良成長企業の投資収益率が良好な一方、「パッとしない」企業の投資収益率はパッとしないままで推移している。言い換えれば、リーマンショック以降、優良成長企業の株式を買えば報われた。他方、知名度は高いが、旬を過ぎた企業を割安だと思って買っても報われなかった。
もう少し具体的に書いておきたい。
リーマンショック以降を2つの時期に分ける。昨年12月末までを「リーマン後」、今年の年初から6月末までを「コロナ初期」として、これら2つの時期における時価総額の上位企業(市場時価総額の0.1%以上の企業、約160社程度)を拾い出し、投資収益率(配当+価格変動率)を計算してみた。
その上で、2つの時期とも、投資収益率が市場平均を上回る企業を選び出した。と、次のように括れるのではないかと考えられた。
すなわち、部品や特殊な素材を生産する企業(日本電産、オムロン、信越化学、日東電工など)、競争力のある製造システムを生産する企業(キーエンス、東京エレクトロンなど)、医療(中外製薬、塩野義、テルモなど)、その他の独自経営企業(ダイキン、マキタ、ソニーなど)、通信(携帯大手3社)である。
国として政策上の参入障壁を設けている通信を横に置いておくと、リーマン後にちゃんとした経営を行ってきた企業が、コロナ初期においても高く評価されていると考えていい。当然だろう。というのもリーマン後、時代の流れを把握し、それに合わせるように積極的に経営してきたわけだから、コロナの初期段階に対しても適切に対応できたと評価できる。もちろん、今後もきちんと経営できるのかどうかは保証のかぎりではないが。
他方、2つの時期とも、投資収益率が市場平均を下回る企業を選び出したところ、鉄鋼・素材、運輸機器、印刷、金融、電力に属する企業が入ってきた。素材、商社などでは、2つの時期とも、市場平均を上回る投資収益率を示した企業が出現していることからすれば、業種だけでは分類できない事態が生じている。同じ業種においても経営力の差が生じているのだろう。
コロナが、企業経営に対して何を求めているのか。これは簡明である。コロナがある程度終息した後を見極め、大胆に判断し、経営を積極的に変革させていく。その力強さが必要とされる。多分、伝統的な日本企業の特徴としての合議制が通用しない、そんな状態が当分続くのだろうと思えて仕方ない。
2020/07/21