ある梅雨明けの夕方、暮れ行く空を眺めつつ誰かと談笑をした。
日が沈むねえ。
そう、日が沈むね。
西の空が赤いねえ。
赤いね。
残照かな。
そう、残照。
なぜ、残照は赤いのやろか。
もう少し地上を照らしていたいという思いがあるからかも。
でも、今朝だか、日が昇ってきたときも赤かったけど。
お日様、今日初めて登場するものだから、緊張感が先走っていたのかも。
お日様だって朝には緊張し、夕には心残りがあるのやろか。
そらそうやろね、山も朝には緊張で赤くなり、夕には心残りで赤くなるから。
「でもね」との声がした。
でもね、お日様は昇りもしないし、沈みもしない。
じゃあ、何が起きてるの。
あんた達が、そして私が、浮いたり沈んだりしているだけ。
それで・・。
その時に地面に隠れていたルビーが、お日様の光を受けて赤く光る。
ルビーが転がっているなんて見たことないけど。
今住んでいる地面は意外と広いから、ルビーも転がっている。
どれだけ広いの。
トンボが釣れ、そのトンボとクジラが遊べるくらいに広い。
空と海の生き物とが、住んでいる場所を換えられるほどに広いの。
そのくらい広い。
その場所の交換の時に、泡としぶきとも赤く色づくのかな。
ルビーの光線が泡と飛沫に屈折する。
お日様の光、それを屈折させたルビー、さらにそれを屈折させた泡と飛沫ねえ。
その赤い光を受けた眼球という世界があり、眼球の中に残照が生じて。
日が沈むねえ。
そう、日が沈む。
西が赤いねえ。
赤いね。
残照かな。
暗闇が迫っている印かな。
2020/08/01