川北英隆のブログ

頑張れ日本のマスメディア

日本のマスメディアの衰退が懸念される。というのも、新聞やテレビを注意深く見ていると、広告(コマーシャル)が劣化しているから。自社関係(仲間内)の広告、同じチャンネルで放送される番組紹介、ACジャパンや公営賭博のコマーシャルなどが目立っている。
長期的な傾向として、広告がネットに流れているから、これまでの大手メディアのシェアが下がっている。足元ではコロナの影響も指摘できる。広告主の業績が悪化し、広告宣伝費を削減する動きである。
マスメディアの経営が衰退すれば、記事、ニュース、放送の質が落ち、多様な見解の形成に役立たなくなる。これに対し、日本には国営放送があるではないかとの見解もあるだろう。国営放送の役割を全面否定するものではないが、それだけになれば独裁国家と区別がつかなくなる。国営放送に対抗するメディアが活躍し、たとえば1つの出来事を多様な角度から報道してもらわないと、客観性の懸念が生じてしまう。
というので、メディアの経営状態と企業の規模(時価総額)を調べてみた。そのまとめとしての図表をアップしておく。
なお、赤字で示したメディア名は東京の民放である。
新聞社(図表の下、日経新聞社以下)は上場していないので、いろんな資料から集めた。それでもデータが十分でなく、たとえば読売新聞の全容は把握できなかった。新聞社、自分自身の情報に関して意外に閉鎖的である。
それはともかく、図表からいろいろなことが明らかになる。ポイントだけを書いておく。
第一に、新聞社と民放を比べると、民放の利益額が新聞社を圧倒している。というか、新聞社の利益額が小さすぎる。販売部数が減少し、ニュースもネットに押されているから、経営が苦しいのだろう。ある記事によると、不動産事業で稼いでいるとあったが、情報がある程度つかめる朝日新聞社では、確かに不動産事業の利益が経営を支えているようだ。
第二に、民放の利益額も大きくない。民放とは、一般的な感覚からすると超が付く有名企業だろう。実態はというと、せいぜい営業利益が数百億円規模でしかない。利益額が大きくないから、お安い井戸端会議番組(バラエティと称するらしい)しか企画できないのだろうか。もう少しましな番組をもっと多く企画できるくらいの利益を得てもらいたいものだ。
第三に、この利益額を反映し、民放の株式時価総額で見た地位の低下が著しい。図表では1989年12月末と昨日とを比較しておいた。これによると、時価総額が増えた民放はゼロである(フジとテレビ朝日は当時、上場していなかった)。現在、民放の時価総額順位は東証第一部上場企業の中で300位台以下である。1989年末当時を調べると(それ以降、上場廃止になった企業を調べ切れていないので概数だが)、TBSと日本テレビは100位台にあり、それなりの大企業だった。
まとめると、新聞社の経営は厳しく、新聞社から派生した民放もどうも斜陽である。ネットの時代、当然かもしれないものの、そのために嘘っぽかった、極端に偏りがあったりするニュースと称した文字情報や画像、映像がネット上、大手を振って流されている。きわめて情けない状態であり、涙がちょちょぎれる。というので、頑張れ日本のマスメディアとなる。
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2020/08/13


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