大文字山を歩いていたらヘビがいた。30センチくらいか。ダイダイ色がかった斑点のあるヘビだった。マムシだろう。「写真」と思わなくもなかったが、「祟りが」と思い、止めた。
爬虫類はあまり得意でない。正直なところ、両親から「触ったらアカン」と言われた生き物が得意でないように思う。
身近なところではゴキブリである。子供の頃に住んでいた家にはゴキブリがたくさん同居していた。夏の夜、台所の電気をつけると、何匹もが動く。飛ぶのもいる(知ってるかどうか知らないが、ゴキブリは飛行の名手である)。それらを蝿叩きで退治するのだが、そんなゴキブリを素手で触ったことはまだ一度もない。
ネズミはもちろん、リスも触ったことがない。歯が鋭く、しかも病原菌を持っている。
ヘビだが、マムシのことは小さい頃から言い聞かされていた。だから、当時かなりの数が生息していたシマヘビにもアオダイショウにも触ったことがない。
ヘビの思い出はいくつもある。
トイレの天井の梁からネズミを飲み込んだヘビが落ちてきたのにはびっくりした。どうしたのかは忘れたが、ネズミを退治してくれたわけだから、そのまま逃したのだろう。
早朝、嫌な予感がしたので、飼っていた文鳥を見に行くと、鳥籠の隙間からヘビが入り込み、鳥を飲み込んでいた。さすがにこれは退治し、文鳥は埋めた。ヘビは火箸で掴んで原っぱに捨てたと思う。
山ではたくさんのヘビを見かける。一番の記憶は、越後駒ヶ岳の下り、9月だったが、何匹とも数えられないヘビ(マムシだろう)が登山道の横の岩場で日向ぼっこをしていた。いるとこにはいるものだと感心しつつ下った。子供のヘビが多くて、襲われるリスクは感じなかったし、ヘビが積極的に襲って来た試しがない。
森吉山に登るため、麓の民宿で泊まった。オジさんがマムシの入った酒を飲ませてくれた。もちろん酔うためではなく、「これで汗をかいても目に入らない」とか説明していた。翌日、森吉山から下り、その民宿のオジさんに迎えに来てもらい、近くの駅まで送ってもらった。その途中、山道で急停車する。オジさんが車から降りるので、「故障か」と思ったが、車と関係なく何やらしていて、やおら棒で捕まえたヘビを見せてくれた。マムシだった。それを帰ってから調理するという。ちゃんと車の中に瓶が入っていた。
いずれにしても、ヘビ、ゴキブリ、ネズミは身近な生き物だが、あまり出会いたくない。上海で食べたヘビ(猛蛇と書いてあっただけで、種類は不明)は美味かったが。可哀想なことをしたかな。
2020/08/26