2回目の安倍政権、発足したのは2012年12月26日、退陣表明が20年8月28日だった。この7年8ヵ月の成果を「すべての情報を集約する」株価で確認しておきたい。
安倍政権が正式に発足したのは12月26日だが、思い出すと、その前の野田政権への失望感があり、新しい政権への期待が膨らんでいた。その野田政権が衆議院解散の意向を表明したのが11月14日だった。これによって期待が一気に盛り上がり、その期待のまま12月15日の衆議院議員選挙で自公が圧勝した。
株価は期待や失望を先取りする。そこで、株価から安倍政権の成果を計るのであれば、11月14日をスタート時点とするのが正しい。つまり、12年11月14日から20年8月28日までの株価上昇率を計算すればいい。比較は欧米の代表、アメリカとドイツである。
具体的に、日本は東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価、アメリカはニューヨークダウ、S&P500、NASDAQ総合、ドイツはDAXとする。いずれも有名な株価指数であるので、ネットで検索すればすぐに正体がわかる。
株価上昇率を比較した図表をアップしておく。図表の上半分に、12年11月14日を100としたとき(100円投資した時)、20年8月28日にいくらになったのかを示した。
そうすると、TOPIXが222.2、日経平均が264.1となっている。TOPIXが見劣りする。日経平均が選ばれた225社、TOPIXが東証第一部上場の全企業(つまり、いろんな企業が混じっている)から仕方ないのだろう。
この水準、とくに日経平均は欧米と比べて遜色がなく、むしろNASDAQ以外を上回っている。TOPIXもドイツを上回っている。とすれば、安倍政権の7年8ヵ月は大成功だったのか。残念ながら、この結論は早とちりである。
図表の下は、リーマンショック(08年9月)の直前、08年8月末(月末の営業日は8月29日の金曜日)を100としたときの、20年8月28日の株価水準を示している。これによれば日経平均を含め、日本は欧米に大きく遅れている。
以上のデータに基づき、安倍政権をどのように評価すればいいのか。
図表には示さなかったが、安倍政権になって以降、13年4月までの1年少しの間に、日本の株価は、日経平均もTOPIX も(つまりすべての企業の株価が)大幅に上昇した。2つの株価指数の上昇率は6割以上に達している。この間、欧米の株価上昇率は1割台にとどまっていた。
この背景として、11年の秋まで、東日本大震災もあり、また政権の問題もあり、日本の株価が低迷していたことを指摘できる。それが安倍政権になり、経済優先の政策(いわゆるアベノミクス)が打ち出された。株価がそれを好感し、リーマンショックからの回復で先行していた欧米を追いかけるように上昇したのである。
しかし、欧米を上回る株価上昇(相対的な株価上昇)はほぼ13年4月で終わった。TOPIXが冴えなくなり、日経平均もドイツとの比較では多少の上昇ながら、アメリカとは差が開くようになった。日本経済の活性化は当初のみ、それ以降はほとんど効果がなかったことになる。
アベノミクスの象徴として日銀黒田総裁のバズーカ砲(超が2つ付くくらいの金融緩和)がよく持ち出される。最初、その轟音に日本企業は驚いて走ったのだが、そのうち「空砲では」と思うようになり、効果がなくなった。アベノミクスもそれに近いのではないのか。
ということで、安倍政権の後継者には、空砲でない、実の多い政策を期待したいと思う次第である。
そういえば京都の天気、毎日ほどゴロゴロと音がするのだが、中心部にはほとんど雨が降らず、死ぬほどの猛暑が続いている。「雷はん、お願いやし、音だけ違うて実際の雨を降らせたってや」と祈っている。
2020/08/30