行政のデジタル化で思うのは、戸籍や住民票の位置づけがどうなっているのかである。また、マイナンバーカードの取得が任意でいいのかという疑問である。
僕自身、マイナンバーカードを取得していない。相手が必要なら、通知カードの番号を知らせることで(もちろん付属の資料を付けて)対応している。というのも、マイナンバーカードの一般的な効能が明らかでないから。
昨年、戸籍法が改正され、戸籍を提出せず、マイナンバーカードの提示(かな?)で済ませられる手続きがいくつか登場するらしい。法務省のページによると、児童扶養手当、奨学金、健康保険などが掲げられている。また、戸籍の届出、戸籍謄本や抄本の取得が便利になるらしい。
で、「いつからや」と思ったところ、令和5年とある。デジタル化の遅れの原因の1つに、この歴史への変なこだわり、和暦がある。要するに3年後の2023年からである。「遅っそ」というところだが、戸籍関係の書類のデジタル化への対応が必要なのだろう。
そもそも、国民の出生、住所などの管理の刷新が、デジタル化の出発点となる。とすれば、戸籍と住民票の処理が一番重要である。しかし、僕の知るかぎり、住民票の書式は市町村によって異なる。多分、システムも異なっているのだろう。考えるだけで「おぞましい」現状がある。
相続手続きの経験があるだろうか。その場合、原戸籍が求められる。戸籍って、その管理市町村を自由に(適当にではないものの)変えられる。変えた瞬間、過去との繋がりが大部分絶たれる。だから、相続の権利を有した者がいるのかいないのかは、通常の戸籍だけでは判明しない。この理由で、親の戸籍を遡るのである。当然のことながら、大正や明治をたどらねばならない。と、当時の戸籍は手書きである。
その原戸籍、デジタル化されていないから、親の出生地に行かなければ取得できない。以前に書いたかも知れないが、僕の場合は親の戸籍と、親の原戸籍が同じ奈良県にあったから助かった。たとえば両親が北海道や九州から東京に出てきていたのなら、どうなるのか。
今更、原戸籍を入力するのは不可能だから、国としては原戸籍をイメージファイル化して、デジタルに対応すべきである。そうすれば、相続もすこぶる簡便になると思う。ひょっとして「行政書士の仕事がなくなる」と心配するのだろうか。「はんこ屋の仕事がなくなるから」と同様、これも変なこだわりである。
この点、アメリカは進んでいるそうだ。前に登場したニッセイの同期のKZ君によると、ハワイに移住していた彼の祖父の足跡(1900年当時の乗船名簿、入国、国勢調査資料)が、アメリカ政府のデータベースを使うことで日本に居ながら把握できるとのこと。ハワイ移民資料館経由だが。
いつも思うのだが、戸籍や住民票といった国民の基礎データは、マイナンバーカードと一緒に、強制的に導入し、適用をしなければ意味がない。少なくともオプトアウト方式(たとえばマイナンバーカードを原則配布して、嫌なら嫌と申告させる方式)の適用である。その上で、マイナンバーカードがなければいろんな不便があることを知らせることである。
税金を強制的に徴収しているのだから、マイナンバーカードも同様でいいはずだと、とくに行政のデジタル化に不都合を感じない者として言っておきたい。
2020/10/12