「バリュー株投資」に関するセミナーを開催した。このコロナの時期なのでオンライン方式を用いた。登壇する4人が喋り、それを録画、編集し、後日に配信する。
バリュー株とは何になのか。そのまま訳すと「お値打ち株」であり、「(値打ちは)お値段以上」である。一般的には「グロース株」、つまり成長株との対比で用いられる。
セミナーに登壇したのは、ラッセル・インベストメントの喜多さん、ベインキャピタルの末包さん、オービス・インベストメンツの時国さん、そして川北の4人である。
ラッセルはコンサルタントとしての立場、ベインはPE(プライベート・エクイティ)の立場、オービスはバリュー株投資の立場から登壇した。進行係としての僕として、どういう議論になるのか多少の不安はあったが、予想以上の意見の一致をみたと思う。
結論は、「バリュー株か、そうではなくグロース株かという対比は正しくない」とのことだった。喜多さんによると、バリュー株かどうかを判定するのによく用いられるのは、PBR(株価純資産倍率=時価総額/株主資本)、PER(株価収益率=時価総額/当期純利益)、配当利回りである。
でも、そんな単純な指標だけで決まるものではない。当然だろう。PBR、PER、配当利回りといった1つの指標で「お値段以上」かどうかが決まれば、株式投資に苦労はいらないし、ニトリが怒ることになる。
バリュー株投資を標榜しているオービスは日本ではともかく、海外で著名である。
そのバリュー株投資において、所属するアナリストが組織内で競争している。経営者(株主)とも独立して企業を評価し、選んだ企業をファンドに組み入れ、投資家に提供している。それでも短期的には「負ける」(マイナスになったり、市場平均よりも劣ったりする)ことがある。目指すのは、長期で評価して高いリターンを達成することであるので、「そんなの関係ない」のだろうが。
ベインの投資は「本来の価値未満で取引されている企業の株式を大量に保有する」ことにある。大量の株式を保有し、その企業のコントロール/ガバナンス権を握り、企業の潜在的な価値を最大限引き出す手法を採用している。本来の値打ちを引き出すためには経営者を派遣することをはじめ、投資家側の努力が必要となる。
ということで両社の選択は、通常のバリュー株投資でのPBRが低くて安い株とか、配当利回りが高くてインカムゲインの大きそうな株とは、次元が異なっている。
ついでに僕の見解を書いておくと、低PBRの株への投資は「安物買い」に終わる可能性が多分にある。日本には低PBRの代表として1倍を割れている企業が約50%もある。PBR1倍割れとは、企業が今すぐ解散したとして、その解散価値未満の株価しか付いていない。だからバリュー株に該当するのだが、本当に「お値段以上」なのか。
そんな株式を大急ぎで買う必要はまったまくない。まず、過去がどうだったのかをじっくり見極めることである。過去からずっと1倍割れだった可能性が高い。経営者がぼんやりの可能性がある。事業内容の魅力に乏しいことも多い。
高利回りの企業も同じである。よくあるパターンは、減配が近い場合である。業績が急激に悪化していて、減配を見越してその企業が売られているのかもしれない。次によくあるのが、成長性に乏しい場合である。その企業の経営として、新規投資したい事業がないため、利益を配当に回しているのかもしれない。もしくは、経営陣に積極性がなく、新規投資を控えつつ、株主に大盤振る舞いしているだけかもしれない。この点も過去を振り返り、売上高や利益の成長率を確認すればいい。
ということで、「お値打ち株」、「バリュー株」という個人投資家を引き付けようとする言葉に不用意に引っ掛ってはいけない。大損するだろう。
2021/01/14