川北英隆のブログ

マスコミ報道のちぐはぐ

友人が憤っていた。何かというと、通勤電車である。満員時だけではなく、通勤電車そのものへの疑問でもある。以前(12/18)に通勤超過勤務手当のことを書いたが、その延長線上だともいえる。
通勤電車のどこが問題なのか。密になり、接触する可能性が高い(満員に近ければ当然接触する)。新たなコロナ変異種の感染力が強いらしいから、通勤時に電車に乗るだけで感染する可能性がますます高まっている。
友人の憤りは、マスコミがこの点を書かないことに尽きる。書いているのかも知れないが、寡聞にして僕は知らない。「忖度がある」と友人は口角から泡を飛ばしていた。ネット上のことながら、何かが飛ぶように見えたので。ライブでの泡ならコロナが大喜びだろう。
そのマスコミ、キャッシュレス決済を「紙幣やコインを手にしないから、感染予防の効果があり、コロナ時代の申し子」と囃し立てている。実際の店舗でのレジも、紙幣やコインに触れないために「トレー経由で」というケースが増えている。銀行にいたっては、窓口での手続きが必要なら予約制を利用せよと言うし、ATMは間隔を空けて並べとの指示が出ている。
そんな「きめ細かな配慮や指示」もしくはそれへの賞賛と通勤電車への無頓着との間に、天と地ほどの隔絶があると思えてならない。だから、友人の憤りに大いなる共感を覚えた。
思うに、1つの理由は偉いさんがハイヤーやタクシーで通勤しているからだろう。だから通勤電車が抱えているコロナの切実な問題を理解していないのではないか。
でも、本当に理解していないとすれば、あまりにも社会の事情に対して無知である。部下とのコミュニケーションが皆無なのか。そんな偉いさんによって社会が導かれ、企業が経営される状態とは、泥舟で沖に漕ぎ出すことと等しい。
とはいえ、賢い経営者は部下のリアルな出勤を制限し、テレワークやサテライトオフィスの導入を図っている。本社を地方に移転した事例も出てきている。
もう1つの理由は、友人が憤っているように、マスコミとして通勤電車の問題を取り上げたくない事情がありそうだ。こちらが本命かもしれない。
通勤電車を利用しなくていいようにするには、オンラインでの業務を推進するだけではなく、企業としてオフィスの立地を再考しなければならない。極端に言えば、東京圏からオフィスが消えてしまい、いわゆる過疎地域、過疎予備軍地域に企業が立地することを意味する。
そうすると何が生じるのか。東京に張り巡らされた鉄路が廃線を余儀なくされる。オフィスビルが廃墟と化す。高級小売店にペンペン草が生える。と、鉄道会社、不動産会社、百貨店などが倒産してしまう。今、これらの業界がマスコミの広告収入を支えているわけだから、マスコミとして日本社会の大きな方向転換、つまり「満員電車の危険」、「都市から地方へ」と書き立てると、天に唾することになりかねない。
でも、以上は極論だと再度書いておきたい。東京圏での通勤電車、オフィスビル、高級店が壊滅するわけでない。それらの利用者が減ることで、企業の勤務者はゆったりとした通勤と仕事のしやすい空間を得て、しかも空き時間に楽しいショッピンクができよう。
加えて地方にチャンスが広がる。その地方に広い住空間を得た勤務者は、長い通勤時間から開放され、優雅な(それに近い)生活を楽しめる。自然環境にも恵まれるため、子供の教育にも最適である。
このように考えれば、マスコミとしても、コロナの時代の新しい生活を積極的に描き、報じていいのではないか。当面、鉄道会社、不動産業、百貨店などが苦しむにしても、それを乗り越えれば、これらの業界にも明るい未来が広がっているように思える。
しかも、苦しむとしても現時点でのトップ層が中心である。めぐり合わせが悪かったと我慢してもらうべきだろう。トップ層が苦しめば苦しむだけ、若い世代には(多分だが)豊かな時代が巡ってくるのだから、「トップがどうなろうとも、そんなの関係ない」である。コロナへの感染リスクが減ることで、老人の多いトップ層にもそれなりのメリットがあると考えれば、なおさらである。

2021/01/27


トップへ戻る