元日本生命の副社長、正田(まさだ)文男さんが2月5日に亡くなられたそうだ。満85歳とある。日本生命で働いていた時、大変お世話になった。
学年の前後は知らないが、確か宇野郁夫さん(元日本生命社長)と同年である。お二人とも社長候補だったらしいが、最後にゴールしたのが宇野さんである。その前の社長、伊藤さんとの関係の差だったのだろうか。
「もしも」はないが、もしも正田さんが日本生命の社長になっていたのなら、今の日本生命はどうなっていたのか。今は国内の生命保険が斜陽の時代である。結局のところは大同小異だったかもしれないが。それはともかく、正田さんは先輩として尊敬に値する人物だったと思っている。
ある時、講演会で喋るからとかで、下資料を作ったのかどうか忘れたが、お供したことがあった。その帰り、「ちょっと寄れ」と言われ、役員室だったかでシャンパンをもらった。ドンペリだった。そんな高級酒とは縁がなかった頃だったが、名前だけは知っていた。
「ええっ」と言うと、「家で飲むと死ぬから、飲んで」と言われた。その一言で変に納得したのを鮮明に覚えている。日本のバブルの絶頂期前後だったと思う。
それでついでに思い出したのは、同じ時に聞いたのかどうか忘れたが、大学で研究者にならないかと言われたこともあったとか。その選択肢を選ばれていたのなら、これこそ波及効果でいろんな変化が生じていたかもしれない。
正田さんと最後にお会いしたのは(調べたところ)2015年2月だった。6年前である。
正田さんに一度会いたいと、僕を含めて同期3人が東京でセッティングした。結局はご馳走になったのだろう。「酒に強かった正田さん、少し弱くなったのでは」と、終わってから3人で話した記憶がある。当時、すでに80歳だったから当然なのだろうが。
時代はどんどん変わっていく。大先輩の訃報も当然なのだが、それでも寂しく思う。ご冥福をお祈りしたい。
2021/02/12