今朝の日経朝刊のニュースによると、東芝に対して海外ファンドが買収を計画しているとか。これに対して東芝の社長である車谷氏は、提案が来ていることを認めた上で、本日の取締役会で議論すると話したらしい。この件に関して個人的見解を述べておく。
一言で表現すれば、粉飾決算以降、名門企業が迷走を続けているとしか思えない。思えば、2015年に発覚した粉飾決算が迷走の直接の原因だった。実際のところ、もっと根が深いのだろうが。その後、修復のボタンをかけ違えたこともあり、未だ余計なことに限りある体力を使っている。
技術力のある企業であるのは確かなのだが、経営者がそれにふさわしくなかった。企業が泣いている。
今回の買収提案だが、東芝の技術の重要性からして、経済産業省が認めない可能性が高いだろう。問題は、それで「万々歳」とならないことである。
以前にも書いたと記憶しているが、粉飾後の経営立て直しにおいて、真逆の方向に走ったのが東芝だと思っている。いわゆる逆噴射である。
粉飾だけなら軽微なものとは言わないまでも、十分に立て直しが効いた。不採算だったり、成長性が見込めなかったりする事業を整理、売却し、採算性や成長性のある事業に人材、技術、資金を集中することである。「あたりまえやん」「ここで書くなや」というところだろうが、現実は異なる。東芝はこの逆に近い方法で経営を立て直そうとした。医療機器や半導体メモリー事業を売却し、2番手、3番手の事業を抱え込んだままにした。
医療機器や半導体メモリーの売却は利益を手っ取り早く出し、毀損した資本(株主資本)を回復させるためである。さもなければ債務超過と上場廃止の危機が迫っていた。また同じ目的で、2017年12月、アクティビストファンドに対して第三者割当増資を行い、株主資本を回復させた。単価262.8円、発行株数22.83億株、6000億円の調達である。なお、その後に東芝は10株を1株に併合しているから、この第三者割当増資の単価は今の株価で2628円となる。昨日の終値は3830円だった。
そのアクティビストファンドの素顔は様々、本当はどんなのだか知らないが、短期的な利益を狙うものが多いだろう。企業が目指す長期的な成長と摩擦を生じやすい。東芝の場合も株主との摩擦が生じ、このために今年3月、臨時株主総会が開催された。
では、そもそも東芝はどうすれば良かったのか。資金を調達し(技術力のある企業だから、政府の尽力もあり、資金を集められただろう)、上場している株式を買い取り、自ら上場廃止を宣言することである。内容を知らないが、ネットのニュースを読むかぎり、今回の海外ファンドの買収も東芝を一端上場廃止にし、経営の立て直しを提案するものだろう。
今から上場廃止することが遅いのかどうかはよく分からない。魅力ある事業を売却した後の東芝には技術があるとしても、事業としてどの程度の価値が残っているのか。しかも、6000億円の調達資金を2倍近い代金を払って買い戻すことになる。
海外から提案されるくらいのことを、当時の東芝の経営者が何故考えなかったのか。不思議である。能力がなかったのか、それとも名門企業にとっては上場維持が至上命題だと思っていたのか。後者なら本末転倒なのだが。
以上、あくまで個人的見解であり、席を置く組織とは何の関係もない。
2021/04/07