東芝がますます混乱してきた。車谷氏が退き、綱川氏が再登板になった。どこで何がどう動いたのか定かでない。しかし、複数の情報からすると、車谷氏はクビを宣告されたようだ。綱川氏はよく解らないが、「彼しかいなかった」ともされる。
何が本当なのかはともかく、車谷氏が社内からも社外からも不人気だったのは確かなようだ。昨年7月の定時株主総会において、彼の取締役再任案に対する賛成比率が58%しかなかったというのは危機的である。また報道(ブルームバーグ)では、「東芝の指名委員会が社内の幹部を対象に行った車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)への信任調査で、「不信任」との回答が過半に達していた」とされる。
その車谷氏、自分のクビをつなぐため、イギリス投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズを引き込もうとしたとも報道される。この噂は複数からも聞いた。
一方の綱川氏は、東芝の切り売りを演じた前歴があり、ボタンをちぐはぐに掛けた張本人である。ある意味で情け容赦ない車谷氏との対比で、「情の綱川」とされるらしい。
これからの東芝はどうなるのか。綱川氏はそもそも上場維持に執心してきた。報道(共同通信)によると、東芝の取締役会はCVCによる買収提案を拒否する方向であり、取締役会議長である永山治氏も買収提案に反対だとか。綱川氏の再登板と平仄が合う。
これで東芝の会社としての当面の方針が定まったとしても、株主、とくにアクティビストとの対立は解消されない。企業買収という火種だけを残して車谷氏が去ったからである。
東芝には日本にとっての重要な技術が複数ある。原子力、防衛機器、情報通信(暗号技術)などである。半導体技術も、今はキオクシアとして分離したとはいえ、依然その株式の40%を保有している。これらが海外投資家の手に、それも無条件で渡ることに政府が安々と同意するわけがない。
東芝の近未来のシナリオはいくつか描ける。
1つは、アクティビスト達と和解し、上場維持を続けるものである。しかし、アクティビストは一層の力を付けたとされる。アクティビストであり、かつ今年3月の臨時株主総会開催を提案した3Dインベストメントが、ハーバード大学の保有だった4.7%の株式を追加で取得したそうだから。
この点を考えると、アクティビスト達との和解といっても、すんなりとはいかないだろう。業績を極端に悪化させてアクティビストを諦めさせるか、逆に要求の大半を飲むかでしかない。この場合、いずれにしても東芝の未来は暗い。
もう1つは政府の力を借りての非上場化である。東芝が現在保有している重要技術が大義名分となる。しばらく政府の掌の中で泳ぎ、再度の上場を目指すことになろうが、この場合は事業ポートフォリオの見直しが避けられないだろう。
半導体、原子力、通信技術などは政府主導で切り離され、他社との合体となろう。いわば東芝解体の第2幕である。解体によって重要技術を安全にしたうえで、どうでもいい普通の企業としての新生東芝を無罪放免というか、放生することになる。
その他にもシナリオはありえようが、取り急ぎ思いつくのが以上である。
2021/04/16