前から気になっていたことがある。何故、日本のコロナワクチンの接種が遅れたのか。とくにワクチンの量の確保が遅かった理由は。
コロナワクチンの接種が遅れたのは、厚労省の責任が大きかったとされる。ワクチンの研究開発に後ろ向きだったことがある。また、医師や看護師に対して命令はもちろん、指揮も満足にできなかったようだ。ましてや(そう思ってしまうのだが)、ワクチンを接種する適切な順番と配分計画や、接種予約とチェックシステムの構築なんて、1年間も考える余裕があったのに、夢のまた夢、混乱が生じ、続いている。
それはともかく(今更何を言っても詮無いのだが)、もう1つ不思議だったのは、ワクチンの輸入でさえままならなかったことである。我らの首相がアメリカに渡り、土下座とは言わないまでも、製薬会社に直接頼み込む事態に陥ったのは事実である。
これは前から思っていたのだが、厚労省は大臣をはじめとしてワクチン輸入にどれだけ努力したのだろうか。多分、まともな交渉をしていなかったのではなかろうか。
この点について、「なぜ日本のワクチン接種は遅々として進まないのか」という河東哲夫氏のコラムを見つけた。
河東氏とは面識がある。彼がウズベキスタン大使だった時(2002-04年)、一度訪問した。当時、外務省だったかにワイン事件があったので、ウズベキスタン大使館に高級ワインをたかりに行こうとの計画だった。訪問した全員が紳士だったことから、当然うまくいかなかったが。成功したのは、ウズベキスタンでの行動計画を上手に手配してもらえたことである。
それはともかく、コラムには「厚生労働省は欧米企業の本社ではなく、話をしやすいその日本支社や代理人との交渉から始めた」とあり、さらに外国の製薬会社の立場からすると、「(厚労省は)普段はわれわれのことを上から目線で扱ったのに」「日本が急に、閣僚や首相クラスで無理を頼んでくる」とある。後者は河東氏がアメリカの製薬会社の関係者から聞いた話しからの類推として書かれている。
このコラム、当たらずとも遠からずだろう。許認可権を握っていれば自ずと態度が横柄になる。かつて通産省(今の経産省)に出向していたとき、そこで言われたのは、役人にとって怖いのは政治家だと。一方、業者は役所の権力にひれ伏す存在である。
その立場がコロナで逆転した。「でも、急に揉み手をされてもねえ」と、アメリカの製薬会社は怒ったり、笑ったりだったはずだ。その映像が手にとるように浮かぶ。だから、我らの首相を相手に日頃の鬱憤を晴らしたのだろう。
今回のコロナはともかく、同じようなことは繰り返す。その時のため、今回のことを反芻し、しっかり学んでほしいものだ。子供に向かって言い聞かせるようで、これも上から目線だろうか。
2021/05/25