川北英隆のブログ

保健所のお仕事の今

知人から怒りのメールが届いた。何かと言えば、PCR検査である。彼のカミさんは看護師で、介護老人保健施設でバイトをしている。そこの入所者にコロナの感染者が出た。と、濃厚接触者を検査することになるのだが、ここで保健所がどうしたか。
保健所が「濃厚接触者」の範囲を極端に絞ったそうである。その判断に対して、施設の看護師や介護士が「食事の介助やオムツを取り替えてるのに濃厚接触やないのはおかしい」と猛反発したそうで、保健所がしぶしぶPCR検査の対象者の範囲を拡大したとある。
しかも、検査結果が昨日の夜までに出る予定だったのに、今朝現在、まだ出ていないとか。このため、知人のカミさんは家庭内隔離となり、子供は(電話かメールで連絡をするのだろうが)学校を休ませるとかでドタバタになったそうである。「ささっとPCR検査をしてくれてたら、こんなドタバタにならへんだのに」と怒っていた。
彼の住んでいる県は人口も多く、感染者も多い。だからコロナの初期段階なら、「保健所も大変やね」となったのだろうが、それから1年以上が経過した。あいも変わらず検査の対象者を絞り込もうという本心がどこにあるのか。彼の怒りの炎が広がっていった。
検査対象を絞ることによって感染が防げるのならともかく、コロナは「検査してもらえへんて、看護師らがかわいそうやし、手を引いたろか」なんて思ってくれない。
想定できる保健所の本心としては、いまだの検査能力が整っていないのか、仕事をしたくないのか、公表する感染者数を大きくしたくないか、どれかだろう。これらが複雑に絡まり合っているのかもしれないが。それともPCR検査をしたところで、その効果は「屁ほどでしかない」と、内心思っているのだろうか。
もう怒るのに飽きたのだが、コロナという戦争状態での政府の役割とは、事態を客観的に(つまり希望的観測に基づくことなく、あれをやりたかったのにとの邪念も振り切り)、かつできるだけ正確に把握し、最悪のシナリオも予想しつつ、やるべきことを列挙し、その優先順位を付けながら、すばやく実際の行動に移ることである。優先順位を付けるには、緊急度の観点もあろうが、人員や予算などの制約もある。決断も必要だろう。
国民が政治家に付託しているのは、これらの適切な指揮である。その指揮能力と度量に期待しているから、選挙で1票を投じた。もちろん政治家だけですべてを行えるわけでない。政治家の頭脳や手足として優秀な官僚を(今回であれば厚労省を中心に)雇い、また専門家会議の設定も認めている。当然、彼らの報酬を血税から支払って。
今回のコロナに感謝すべきとすれば、次の点だろう。政治家に期待どおりの能力があったのかどうか、厚労省などの官僚や彼らが雇った専門家が優秀だったのかどうか、もしくは彼らに国民のために働こうという気概と行動力があったのかどうか、これらを明らかにした点である。ある意味、国民としては、命もそうだし、金銭的にも高くつくテストだった。テストの結果がどうだったのかは、あえて書かない。
蛇足ながらもう1点、比喩的に書いておく。コロナではなく、某国が攻めてきたらどうするのか。まず鳩首会議を開き、その結論が次のようなものになるのだろうか。最終的には専門家と法律学者の意見を聞き、その上で非常事態宣言を出すのかどうか、また防衛というか反撃をどうするのか決めたいと。それを国民に向かってアナウンスするのか。さらには、現在のところ適切な法律がないので急いで国会を開き、防衛のための法律を成立させると宣言してから、某国からのミサイルが雨霰と降る中、会議を繰り返すのだろうか。
国民として、よくよく考えないといけない。
「さざ波」程度だった保健所への友人の怒りが、大波になってしまったが。

2021/05/27


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