東芝がまたまたずっこけた。3月臨時株主総会で可決した「弁護士による調査」が報告され、株主総会での投票権を抑圧するための恐喝まがい行為が浮かび出たからである。政府というか経済産業省(大臣)は「我関せず」のスタンスだが、これもまた不自然である。
経産省としては、報告書の真偽を含め、何が起きていたのか(いなかったのか)を明らかにすべきである。そもそも経産省はコーポレートガバナンス(企業統治)推進・充実派の旗手であり、一方で株主総会での株主の投票権はコーポレートガバナンスの根幹であるから、今回の報告書の真偽の確認は経産省として当然の役割だと思える。経産省としての安全保障上の重要企業であれば、なおさらだろう。
それをパスするというのは、不自然であり、「報告書の内容は真実だったのか」とみなされて仕方ない。もしくは、経産省がコーポレートガバナンスの旗手としての役割を離脱する、荷が重すぎたとの意思表明なのだろう。
断っておくが、僕は若い頃、経産省(当時は通産省)で2年間仕事をした。出向(正確には派遣)の身分だった。だから経産省に知り合いが多かったし、その知り合いにいろいろと教えてもらった。山の師匠も経産省である。当時の組織と雰囲気は立派であり、役所として先端的だと感じていたし、今も当時に対して同じ思いである。
それはともかく、東芝に関しての感想は一言、「やはりね」である。社風は一朝一夕に変わらない。東芝もやはりそうである。
むしろ、「東証第一部上場を維持したい」という目標こそが、東芝の社風そのものである。前CEOだった車谷氏が辞任する時に、同社の指名委員会委員長の永山治氏が、「(車谷氏から)東証第一部への復帰で東芝の再生ミッションを完了したとして辞任の申し出があり・・」と発言しているのには、正直なところ「へへ」っと笑ってしまった。
言い換えれば、実よりも名、ダンゴよりも花の社風である。その東証第一部上場とて、どれだけの花なのか。時価総額10億円、つまり高級マンションの並程度の規模しかない企業でさえ東証第一部上場が現実である。カビの花、つまり胞子嚢程度かもしれない。
そんな企業だから、取締役会に関してコーポレートガバナンスが要求する最高級の形式だけを整え、「これでどや、すごいやろ」(関西弁がもったいなかったかな)と見栄を張ったのだが、実態は裸の王様というか、張り子のトラというか、虎の威を借る狐だった。「トラさんも狐さんも、こんな場面に登場させて御免なさい」なのだが。
でも、東芝を無邪気に笑えない企業がまだまだあるはず。とくに歴史ある大企業の場合は、東芝的でないのかどうか、わが身のことを振り返ってもらいたいと思う。
最後に、僕としては東芝に大いに感謝している。というのも、ここ数年、年に1回はニュースのネタを提供してくれたから。毎月1回の原稿のノルマ、東芝がいて助かった。
そういえば、父親は東芝の株主でもあった。30年くらい前だったか、資金繰りのために東芝を売ったが、その後、僕から「買い戻したら」とは一言も発しなかったし、買い戻しはなかった。
2021/06/19