朝日新聞のネット版を見ていると、「株主に説明できない」との表題の下、ゆうちょ銀行のことが書いてあった。内容はと言うと、来年4月にスタートする東証の新市場区分において、今の市場第一部に相当するプライム市場にゆうちょ銀行が不合格だという。
今の市場第一部に相当する新しい市場はプライム市場、第二部はスタンダード市場である。成長期待の企業はグロース市場に振り分けられる。この新しい市場区分への「合否結果」は、すでに東証から上場企業に伝えられた。
その結果、ゆうちょ銀行はプライム市場、スタンダード市場にも不合格だった。当然、グロース市場に該当しない。
もっとも「不合格」だからといって、すぐに上場廃止になるわけではなく、「経過措置」が設けられるので、その適用を申請すれば「当分の間」はプライム市場に残れる。でも、「当分の間」が具体的にいつまでなのかは示されていない。来年4月から1年以上あるかとは思うが。
その朝日新聞のネット版には、ゆうちょ銀行の福島克哉執行役(IR部長)の弁として、「規模からするとプライム。スタンダードにも上場できないようでは株主に説明できない」とするが、この認識、つまり「巨大やから当然プライムや」との感覚が(朝日新聞の記者がどこまでIR部長としての発現の真意を汲み取って書いたのかは不明ながら)大きな間違いである。今は(昔からそうだが)、上場株式は量よりも質である。
ゆうちょ銀行が不合格だった理由は、表面的には親会社である日本郵政がゆうちょ銀行の株式の89%(数値はネット版による)を保有していることにある。その親会社は政府の支配下にある。このため、ゆうちょ銀行が利用者や株主の顔を見て仕事をするというよりは、政府の顔を最初に見る。その結果がうまくいっているのかというと、株主として業績から判断せざるをえない。
ゆうちょ銀行の現在の時価総額は4.2兆円である。株主は42万人いる。現在の株価は上場当初の半値である。時価総額で見る限り、もはや日本のトップ級の企業ではないし(34位だとか)、世界をも渡すと、10兆円を超えないと「大したことない」。
しかも、ゆうちょ銀行の株式のうち市場での取引の対象は10%程度、つまり約4000億円だから、「その程度の企業なら日本でもそこらに転がっている」。ひょっとして「なんちゃって第一部上場企業」かも。経過措置の適用を受ければ、まさに「なんちゃって」になるわけだが。
ということで、ゆうちょ銀行というか日本郵政には発奮してもらいたいものだ。と書きながら、いつもと郵便を玄関まで運んできていくれる親切な郵便オジさんの顔が浮かんだ。「どうしてくれるんでっか」と、そのオジさんの代弁をしておきたい。
2021/07/30